【 FE風花雪月 短編夢】運命なんてない

この世で一番綺麗だと思った(ユーリス(甘)) ページ10

『私、今まで会った人の中で一番ユーリスが美人だと思うんだよね』


並んで座ってスープを啜りながら、Aは唐突にそう切り出した。

毎度の事ながら、話の脈略がない隣のそいつをじっと見つめた。

褒められて悪い気はしねぇが、どんな気持ちで言ってんのかがさっぱり分からねぇ。


｢まぁ、俺自身顔には自信あるしな｣


同意するように頷いて反応を窺うも、Aは表情一つ変えず食べ終わったスープの皿を避け、今度はサラダの皿に手をつけはじめた。


｢おーい、これでこの話終わりか？｣
『ん』
｢お前な…｣


サラダを口いっぱいに頬張り、待ってというように手を口の前に上げたそいつに行儀良いんだか悪いんだかと微妙な気持ちになった。


『他にも綺麗だなって思う人は沢山いるんだよ。エーデルガルトとか……。逆にユーリスのこと好みじゃないって人もいると思うけど、でも色々考えてやっぱり私にとっての一番はユーリスだなって思ったの』


咀嚼して飲み込んだ後に言った言葉に俺は理解が追いつかず愕然とした。

さっきまでハムスターみたいに頬を膨らませてサラダ食ってたヤツが言う台詞にしてはロマンティックすぎるだろ。

なんだかごちゃごちゃ考えるのも阿呆らしくなるほど、恥ずかし気もなく言い放って微笑んだそいつの頬を人差し指で軽くつついた。


｢それって、俺のことが好きってことで良いのか？｣
『えっ』


全く想像もしていなかったとでも言うように間抜け面をした後、Aの顔はみるみるうちに真っ赤に染まった。


『……そう、なのかも』


小さい声で肯定したAは頬に触れたままだった俺の人差し指をぎゅっと柔い力で握って俺を見つめた。


『ユーリスが好き……。うん。私、ユーリスのことが好きだよ』


噛み締めるように丁寧にそう告げて破顔したのを正面から見てしまった俺は掴まれて振り解けない手とは逆の手できっと赤くなっているであろう顔を何とか隠そうと顔を覆った。


｢あー……、Aも綺麗だと思うぜ？俺は｣


柄にもなく照れて、目を逸らしたままそう口にした俺に嬉しそうに『ありがとう』と礼を言うAの素直な態度に、その純粋さが俺にとっては何よりも綺麗で尊いと羨むものだということを、きっとAは知らないだろうなと思う。

胸が暖かな感情で満たされるこの時が、何より変え難いものなのかも。


｢まぁ、俺様の次にだけどな｣


そう笑い混じりにはぐらかした。

全部、今はまだ伝えるつもりはない。

女神なんかに渡さない(エーデルガルト(切甘))→←恋心など消してしまえれば良かったのに(ディミトリ(切))

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