片恋Wish(ドロテア(切甘)) ページ23
どうして?
私の方が絶対貴女を好きなのに。
Aちゃんの心の中に居るのは私じゃない。
貴女の視線は、声は、心は、全てあの人に向けられているもので、きっと私が望んでいるものは何一つ手に入りはしないのでしょう。
けれど、諦められない。
諦めてなんかあげない。
だって、貴女が私以外の人と居るだけで身を裂かれるような痛みに苛まれる。
Aちゃんが他の誰かのものになるだなんて、そんなの嫌よ。堪えられない。
だから、私は手放すの。
大切だったこの関係を終わりにするの。
だってそうしないと、いつまでも私はAちゃんにとって友達のひとりにすぎないでしょう?
『ドロテアちゃん……今、なんて…』
驚いた顔のAちゃんは私の瞳を真っ直ぐに見つめている。
驚きと動揺を織り交ぜたような表情の彼女に私はもう一度先程の言葉を繰り返した。
「……好きよ。私と付き合って」
『そ、それはどういう意味で……?』
この言葉の意味が分からないほど、彼女は鈍くはない。
私のこの発言の意図が自分の想像と違いないか確かめたいのでしょう。
「勿論、恋人になってという意味よ」
『それは……。無理だよ、だって私には』
「好きな人がいるから?それでもいいの」
『え?』
そっと彼女の頬に触れた。
今までだって同性同士の気軽いスキンシップで触れたことがなかったわけじゃない。その時は擽ったいと笑うだけだった彼女の頬は真っ赤に染まっている。
……初めて私のことを意識してくれた。
その事実が私の胸を満たして、私は彼女の唇に口付けた。
『どうして……?』
「だって私は同性で、他の誰も私とAちゃんの関係を疑ったりなんかしないはずだもの。だから、Aちゃんに好きな人がいて、最悪その人と付き合ったとしても、関係ない」
それでも私はずっと貴女のことを好きだから。
『そんなの、ドロテアちゃんがつらいだけだよ。私は他の人が好きなんだよ?気持ちがないのにドロテアちゃんと付き合うなんて出来ないよ』
「いいえ。違うわ。そんなことない」
今にも泣いてしまいそうな彼女を力いっぱい抱きしめた。
私より低い背も、甘くて優しい彼女の香りも、緊張で少し強ばる身体も、貴女の陽だまりのような温もりも何もかも愛しい。
私は全部欲しいの。
けれど、全部は手に入らないとわかっているから。
「私はAちゃんの隣に居れないことが何よりつらいの」
本当は一番貴女の心が欲しい。
月明かりに照らされて(ディミトリ(切甘))→←少しずつ近づく君との距離(アッシュ(甘))
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安城(プロフ) - リリカさん» 初めまして。返事が遅くなり申し訳ありません。楽しく読んで頂けているようでとても嬉しいです!現在リクエスト停止中でして、再開時にはこちらではなく続編の方にお声掛け下さい。よろしくお願い致します! (2023年4月7日 20時) (レス) id: 1cc22b913b (このIDを非表示/違反報告)
リリカ - こんにちは。はじめまして!!滅茶苦茶遅いですがこの小説を見つけ楽しく拝見させて貰っております!!リクエストを御願いしたいのですが、ベレト先生で狂切はできますでしょうか? (2023年1月16日 18時) (レス) id: 74d0f04bca (このIDを非表示/違反報告)
安城(プロフ) - 桜さん» 初めまして。短編を全部お読みくださって下さっていること、またTwitterのフォローまでありがとうございます!リクのリンハルトお受けできるのですが、更新はこちらにではなく2の方になりますので、よろしくお願いします。 (2021年3月29日 14時) (レス) id: 6990b31a24 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 改めて初めまして!Twitterでそちらをフォローしていただいている桜と申します!風花雪月の短編夢は全部大好きでいつも楽しく読ませて頂いてます。早速リクエストをお願いしたいのですがリンハルトの狂甘夢とかは大丈夫ですか? (2021年3月29日 12時) (レス) id: 9bdfc12b9d (このIDを非表示/違反報告)
安城(プロフ) - 春雨ハルトさん» こちらこそ、リクエストありがとうございました!ご期待に添えるものになっていたら、幸いです…!うわぁ〜!Twitterのフォローまでありがとうございます!気まぐれ更新ですが、これからも更新していこうと思うので是非、お暇な時に読みに来てやってください! (2020年11月11日 17時) (レス) id: 6990b31a24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:安城 | 作成日時:2020年8月8日 1時