一匹目 ページ1
「アーーーッ！！」
「な、なにクッキー？！」
キッチンに唐突に響いた上司の悲鳴に顔をしかめながら駆けつけようとするA、もとい、ここの探偵事務所の唯一の助手。
クッキーとは彼女が属する７班の班長、久木道春のことだ。
「うるさいなぁ…」
キッチンのカウンターでため息をつく眼帯の青年、斑目ナオトは心底うざったそうに騒ぎに目をやる。
彼の最愛の班員､鈴村匠もキッチンに居るため、気にならないわけではなかった。
「すずくん、大丈夫なの」
声をかけると、直ぐ様元気に返ってくる。
「んん、大丈夫！ちょっとこぼしただけ！」
「匠、これ大丈夫なのか！？」
「クッキー動かないで！飛び散る！Aも入ってこない方がいい！」
うなずくA。
そんなAとあわあわしながら溢したであろうお湯を拭いている二人を見てため息をついた青年がまた一人。
Aがそちらに目をやると、いつも通りいかにも不機嫌な顔をした同じ班の霧島志狼が座っていた。
「おいA、なにみてんだ。飯作るのは今日そいつらだろ。早く座ってれば良いんだよ」
朝からドスの聞いた声で、すこしビクッと驚くA。
「Aちゃんこっちだよ〜」
その横から正に真逆の性格の青年、同じく７班の小金井翼がにこやかに彼女を誘う。
それに志狼が不満を挙げた。
「は？なんでまた…！まだ班で固まって食うつもりか」
「良いでしょ？あ、クッキーはシロちゃんの横ね」
「あ！？」
Aがそこに着くと、翼がおはよう、と声かけてきたので、彼女もおはよう、と返す。
それを見る志狼は、不満そうだがなんとなく優しい目をしている。それに気づく人は居ないが。
「シロもおはよう」
「はぁ…Aおはよう」
「シロちゃん朝からため息ばっかだと幸せが逃げちゃうよ」
「誰のせいだと思ってんだ」
「Aちゃんのせいじゃないよ！？そんな顔しないで」
横に腰かける助手の悲しそうな顔を見て慌てて声をかける翼。
「いやAだけじゃなくてお前ら７班だっつってんだよ」
「え〜シロちゃんも７班じゃん」
「ぐ…！！」
切羽詰まる志狼とからかう翼、その横で慌てるA、忘れられているがキッチンを拭く久木。
そんな７班を見てナオトが苦笑した。
「確かに７班は騒がしすぎ」
その呟きは再び叫んだ久木と匠にかき消された。
続く
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作者名：Noahu | 作成日時：2017年12月10日 8時
