†怒れる神よ ページ8
「ほら、Aさん入ってください」
咲也君が大きな団員寮のドアを開き、僕に道を開けてくれた。
するとがやがやと賑やかな声が聞こえてきた。
「お邪魔します」
おそるおそる玄関に入る。幾つか脱ぎっぱなしてある靴を踏まないようにしながら咲也君のあとに続いた。
因みに靴は僕のを含めてちゃんと揃えておいた。
「咲也お帰り。ん？誰だその人」
目の下にくまを作った好青年が出てきた。
「綴君ただいま。彼は今日知り合った人で…」
咲也君が僕を連れてきた成り行きを話した。
「へえ。Aさんって言うんすね。宜しくッス。うちは大所帯なんで、一人増えてても分かりませんよ」
笑いながら手を伸ばしてきた綴くん。
その手をとり、軽く振る。
「宜しくお願いします、つづる君でいいんですよね？」
「っす。…Aさん、俺より歳上っすよね。敬語とか無しでいいんで。ほら、その方がアットホーム感ありますし」
綴君が申し訳なさそうに言い出す。
ああ、服装だけは大人びてるってよく言われる。
恐らく同い年くらいの綴君に、僕は勿論笑顔で返した。
「え？ああ…どうだろう。じゃあ、そうさせてもらおうかな。綴君もそうしてよ」
「…じゃあ、お言葉に甘えて。」
後ろにいる咲也君はうんうん、と頷いた。
嬉しそうだ。
「臣君！夕御飯もう一人分追加できますか？」
咲也君が奥の部屋に向かってさけんだ。
すると、野太いが優しい声が返ってきた。
「おぉ、お帰り。大丈夫だけど、何かあったのか？」
「はい！お客さんです！」
「お客さん？分かった、用意するから手を洗ってきてくれ」
高校生にもなってはーい！と笑顔で元気よく返事をしてから僕を連れて手洗い場に向かう咲也君。
弟ができたみたいで嬉しい。
一緒に手を洗っていると、咲也君が鏡越しで僕の顔をじーっと見つめてきた｡
「…なにか変なことしちゃいましたか？」
すると咲也君はビクッとしてオロオロと話し出す。
「あっ、あの、その！Aさんって、かっこいいなーと思って…すみません」
「…僕が…」
自信を褒められたのは産まれて初めてだ。
強いて言うなら、親戚や親や近所の方々には小さい頃散々ちやほやされたがそれはノーカウントだが。
「…そんなこと無いですよ。それより、おみ…さん？が僕の分まで用意してくれているんです。行きましょ！」
「は、はい」
腑に落ちない顔をしている咲也君を急かし、無理矢理話題を変えてリビングに向かった。
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作者名：Noahu | 作成日時：2017年9月5日 23時
