†囁くようにして ページ20
「愛してやるなんて、可笑しいだろ。お前は男で、俺も男だ。」
「そんなのは…分かってるさ…でも！！…俺は…」
「ん、まって。今のところはもっと溜めた方がいい。そんなのは…で行き詰まってる感じにしてみろ」
既に台本を覚えた陽翔が読み合わせながらアドバイスをしてくれる。
陽翔の恋人役の女性キャストは勿論この場にいないので僕達だけでできるシーンを合わせてる。
「うん。…そんなのは…っ分かってるさ…でも！！」
「あ、いいね。動きも悪くない」
「ありがとう。…次は…」
そこで、リビングのドアが開いた。
まるでアポローンのように優雅に後ろでてドアを閉めたのは、レニさんだ。
「レニさん。」
「順調か？」
「勿論ですよ。Aもまあいいんじゃないですか」
さらっと妥協してるかのように言うのをやめてくれ陽翔。
「頑張ってくれ、A」
レニさんはいつもより心なしかぎこちない笑顔だ。陽翔許さない。
「さ、冗談はさておき」
心臓に悪い冗談過ぎる。
小さく首をかしげて、早速成果を見せてくれ、と微笑むレニさん。可愛い。
陽翔が机に置いていた台本を手に取った。
「A、いける？」
「ああ。」
台本を開き直した。
†
読みあわせを終えて、褒めてもらい、軽くアドバイスを貰った。
…意外とあっさり終わってしまった。
そして、なんやかんやでレニさんとオマケの陽翔に夕飯を振る舞うことになった。
何を言っているかわからないと思うけど僕も何が起こっているのか分からない。
因みに今は夕飯のパスタやらを作っている。
ダイニングテーブルに着いているのは、陽翔とレニさん。
陽翔さえ居なければまるで新婚夫婦だ。
＊
「美味しい」
いつもより少し瞳を開いて言うレニさん。
口を押さえる手が相も変わらず美しい。
そのダブルパンチに惚れ惚れし、固まる僕を見て笑いをこらえる陽翔に天罰をお下しださい、ゼウスよ。
＊
上品な仕草でいつの間に出したのかシルクのハンカチで口元を拭うレニさん。
「Aは料理が上手いんだな。ご馳走さまでした。」
ふふ、と笑いハンカチをしまう。
どこのアフロディーテかと思う。
神話ネタばかり浮かぶのはレニさんの雰囲気だけじゃなくて、恐らく無駄に神秘的なこの家のせいだろう。
「では、私はもう帰ろうかな。二人とも仲良くするんだぞ」
前言撤回
レニさんが居てくれないと創作意欲なんて沸きません。
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作者名：Noahu | 作成日時：2017年9月5日 23時
