†囁くようにして ページ19
「悪くない」
うむ、と言いながら朝食を頬張る陽翔。
相も変わらず上から目線だ。
「コーヒー淹れたよ」
エインズレイのティーカップにコーヒーを注いで、ソーサーごと二人分を机に運ぶ。蝶々の取っ手が可愛らしいデザインだ。
「ありがと。んー、いい匂い」
僕は青色の方のカップを取り、かなり熱いが気にせずに啜った。
上品でないのは癖なので許してほしい。
いい香りが口いっぱいに広がり思わず微笑む。
「美味しい。Aコーヒー淹れるの上手いんだな」
熱いのにわりと一気に飲んだ陽翔は満足げに、少し驚いた風に言った。
「そうかな。多分、豆がいいんだと思う。スペシャルティって書いてあった。」
「ん、いいやつじゃん。てゆうか豆から淹れたのか」
コーヒーで一服したあと、二人で片付けて髪などを整えに洗面所に向かった。二人だけだというのにわりと賑やかな朝食だった。
歯を磨き終えて、かなりハードな寝癖が付いていたので手で水を付けようとしていると、陽翔が僕の顔を凝視してきた。
「…陽翔？」
「Aって、綺麗な顔してるよな」
________…脳裏に浮かんだ…咲也君の笑顔を掻き消す。
真顔で言われた。さらに、状況も状況なのでかなりやべえ雰囲気になる。
「陽翔、僕はレニさん一筋だからね」
「いやこれお前の台詞だろ！」
慌てて弁解する陽翔。
†
そうこうしているうちに、練習の時間になる。今日から少しの間僕らはここで練習をするそうだ。レニさんも来てくれるらしい。
だから必死に寝癖を直したのだ。
陽翔は枕元のシャツとブレザーに気づき急いで着替えてきた。
練習はあの無駄に広いリビングで行う。
カーペットが邪魔だが仕方がない。
レニさんはいつ来るか分からないので先に読み合わせる事にした。
二人分にしてもらった台本をそれぞれ開く。
「うーわ、何度みても同性愛だこれ」
うへぇ、と顔をしかめる陽翔。
目の前に一応同性愛者の僕がいることをもう少し考えてほしい。
パラパラと粗方読み終わり、僕はため息をつく。
粗筋は、同性愛者の僕が陽翔に恋をしてしまい、陽翔は僕を毛嫌いするが段々気が変わって行く。たが僕が勘違いをして自ら命を断ってしまう…
切ないラブストーリーといったところだ。なんだかGOD座らしいといえばらしい。
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作者名：Noahu | 作成日時：2017年9月5日 23時
