†囁くようにして ページ16
「良くなってきたね」
レニさんに褒められた。
今日死ぬのかもしれない。
今日はレニさんが台本を粗方書けたそうなので陽翔と僕だけで一先ず読み合わせることになった。主役が陽翔、準主役が僕。大役だ。
陽翔がその前に、と僕の練習の成果をレニさんに見せたがった。
恋のキューピットにでもなったつもりなのか。
ありがとうございます
案の定褒めてくれたレニさん。
にこにこと営業スマイルだ。
にやけそうになり、ンんッと咳き込む。
レニさんが陽翔に台本のコピーを渡した。陽翔が僕にも見えやすいように台本の向きを変えて僕の隣に立つ。
「…え？」
「……これ…」
そう、レニさんが書いたものは恋愛もの。
それも、同性愛ものだ。
「なにか？」
何故驚くのか、なにか不満でもあるのか、とでも言いたそうな顔で僕たちを見る。
「これ、見に来る人少ないんじゃ…。」
陽翔が率直な意見を言う。流石に気持ち悪がる人もいるだろう。
僕はレニさんが書いたものに文句を言うつもりはないが…。
「そうか？…ではAを女役にするか…？最初はそれで書いていたんだ、でも流石に初舞台でそれは嫌かと思ったんだが」
ふむ…と綺麗な顔をしかめて顎に指を添えた。
「女役…Aが…ｯ…ふふ」
「ちょ、陽翔笑わないでってば」
「フフ、悪くないだろう…ｯ…？」
「似合うとｯ…思います…ｯ…くふふ…」
レニさんまでこらえ笑いをする。
そんな笑いかたするのかと見とれている場合ではない。
僕が女装することが着々と決まって行く。勘弁してくれ。
「僕は、同性愛ものでいいと思いますよ！！」
ナイスな発想だ！女装は嫌だ。
すると陽翔がええ！といった。
「それ本気でいってんの？」
首をこちらに向けて固まる陽翔。
そんなにヤバイことを言っているのか僕は？
レニさんはなんだかホッとしてるような顔だ。
案の定美人である。
「実は、今回は舞台が工事中だ。だから劇場を借りることにしたんだ。Aには申し訳ないが小規模なものになってる。」
「いえ、構いません。むしろ初舞台でGOD座の舞台に、準主役で立つなんて。そっちの方が緊張してしまいます」
へら、と笑う僕を見て目を細めて微笑んだレニさん。
「それで、Aの演技のしかたが同性愛ものに合ってると思ってね」
いやなに言ってるんですかレニさん
それで、から先がアグレッシブな感じになってます。
陽翔の呆れ顔が見てとれた。
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作者名：Noahu | 作成日時：2017年9月5日 23時
