†明くる日は ページ15
ここまで、最低なことをしてきた。
全てに謝罪と慈悲を送りたい。
だがもう遅い。
僕は、〃GOD座〃というレッテルを貼られてしまった。
それは、彼等にとっての敵であり、最も毛嫌うものであり、和解は不可能である。
怒鳴り散らす丞と、涙目になってきた紬さんを横目に呟く。
それは、謝罪とGOD座と知った途端態度が変わってしまった彼等に対しての皮肉を込めたものだ。
「…GOD座で、ごめんなさい」
場が止まる。
丞も口を閉ざした。
心底申し訳なさそうにしたあと、陽翔お得意の表情をした。
勝ち誇ったような、悲しそうな、どこか儚い、笑顔。
「_______A君…」
咲也君が呼ぶ。
「咲也君、ごめんなさい。」
「Aく、ん…俺…」
なにか言いかけた咲也君から顔を反らして荷物を掴みMANKAI寮を駆け足で飛び出した。
なにか後ろから叫び声が聞こえたが追ってくる気配はない。
暫く走ると陽翔が待ち合わせたバーの前にいた。
走るのを止めて歩き出す。
僕に気づいた陽翔は声をかけてきた。
「ん、Aお疲れ。終わったのか？」
「終わったよ。それより陽翔、綴と話してるときに連絡しないでよ」
ここで待ち合わせることを知らせてきたのは綴と寮に向かう途中だった。
携帯を見ていなかったらどうするつもりだったのか。
「まあいいだろ。」
「まあ…。」
「ほら、飲んで忘れようぜ。稽古に励んでくれないと困るのはレニさんだぞ」
「…まあそうだね」
背中を軽く叩かれ顔をしかめながら陽翔に続いてバーに入った。
「え？もう完全に切り捨てたのか？」
「うん、今更戻ろうとは思わないし。次に彼等に会ったら気まずくて死んじゃうよ」
陽翔のお勧めのお酒を飲みながら、MANKAIとの決別はできたと話す。
「これ美味しいね」
「だろ。ここオススメなんだよ。特にそのカクテルな」
「へぇ…また来たいよ」
「勿論。公演成功したら来るか」
「プレッシャーかけるね」
笑いながら、酔った勢いで彼等の記憶も消したくて一気に飲みほした。
顔が火照るなか、ズキッと痛んだ心。
咲也君の笑顔を最後に見ることはできなかった。
そりゃあそうだ。
でもGOD座の僕は、こんなことで怯まない。
仲間を切り捨ててでも、完璧に世界を作り上げる。
明くる日は一人、帰ってきても一人だ。だが、またGOD座に行けばレニさんが居る。
どうやら僕は、満開の笑顔より、繊細で儚い笑顔が好きらしい。
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作者名：Noahu | 作成日時：2017年9月5日 23時
