†明くる日は ページ11
GOD座の稽古場は陽翔の声のみが響いていた。
現在GOD座は改修工事のため公演は暫く中止に。そのため、劇団員も休暇となっている。
そして、やはり次回の公演には僕を使いたいとレニさんが言ってくれたので絶賛陽翔と二人で稽古中だ。
レニさんは別室で脚本を考えている。
僕を見込んでくれたレニさんに応えたい。
しかし、悲しいことに速急に体力がなくなり絶賛休憩中だ。
その間も陽翔は発声練習を怠らない。今までの公演の台詞を言ったりもしている。
陽翔からの忠告のあとも、僕はMANKAIカンパニーに通っていた。臣君のご飯は美味しいし、東さんには麻雀で勝ちたいし、咲也君の笑顔を見ていたい。
あの温かい雰囲気を一度味わってしまうともうやめれなくなる。
まるで妖しのようだ。
また、あの温かさにすがってしまう。
彼等に会う度にレニさんを裏切っているような気がした。
咲也君の笑顔を見ると胸がズキズキ痛んだ。
GOD座だということは伝えていない。
陽翔にも、彼等に肩入れしていることは言っていない。
ため息をついてレニさんがいる部屋の方を見る。
繊細な髪を垂れ肘をつきながら机に向かうレニさんを想像してうっとりとしてしまう。
だが、僕はこの人を裏切っているのかと思うとその妄想はかきけされた。
「A。そろそろいけるだろ」
陽翔が待ちくたびれた様子で声を荒げた。
「ごめん、わかったよ」
ゆっくりと腰をあげて、筋肉痛になりつつあるふくらはぎを軽くさする。
んーっと延びをしてから陽翔の所に向かった。
「なんか考え事でもあんの」
「へ？」
突然の質問。
「なんか、最近顔色悪い」
「そんなこと…」
そんなことはないと、言い切れなかった。
陽翔なら、話を聞いてくれると思った。
「…いや。……陽翔、その…さ…。」
「綴。お待たせ」
「Aお疲れ。」
駅で綴と待ち合わせて、今日は話したいことがあるから皆を集めてと、MANKAIの監督のいづみさんに連絡を取った。
「なんかあったのか？」
歩きながら綴がきいてきた。
「なにが？」
とぼける。
「いや、話したいことって。」
「あー、それは皆の前で言うよ。」
へへ、と笑う。
すると綴も笑う。
「じゃあ早く着かないといけないな」
「…そうだね」
僕らは足を早めた。
夕日が背を照らして長い影を作っていた。
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作者名：Noahu | 作成日時：2017年9月5日 23時
