壊れた地球【ヘタリア2Pカラー】

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頼む。これは料理。ちゃんとした食材。変なものは入れてない。自身の口から言ってくれ。

念仏を唱えるように只管望んだ回答が来ることを祈っていたが、彼の笑顔はとても無邪気で狂気的で、純粋な悪魔のようだった。


「どう見たって目玉じゃねえか。変なこと聞くんだな、お前」


前言撤回。食欲が全て消え失せた。

いや、これは聞き間違いかもしれない。聞き間違いだ。絶対。


「あ、お前も作り方知りたいのか？いいぜ、材料はそのへんのやつなんだが、まずは肉をミキサーに」

『違う違う違、解剖の手順とか大丈夫だから！！』

「いや、解剖はもう終わってるんだ。だってそのままじゃデカすぎるだろ？先にバラバラにして保管しなきゃ腐って」

『分かった！！分かったから！！』


何何何。全然分からない。澄ました顔で何言ってるのか、まるでちっとも分からない。分からない。分からない！

だめだ、だめだ！これはまともじゃない！！朝食なんか、そもそもこれは食べるものじゃない！逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げろ！！


「顔が青いな。どうしたんだ？」


ぐるぐると混乱で周りも見れなくなっていると、頬に彼の手が添えてあることに気がついた。向かい側の机から身を乗り出して、青いビー玉の瞳が心の底まで覗き込んでいる。
季節違いにも拘わらず伝う汗が、緊迫感をより強めた。


「なんだよ、変な顔して」


彼は顔を見るなり楽しそうに、私の頬を抓ったり下瞼を下げてみたり、玩具のように人の顔で遊んでいる。

悟られてはだめだ。繕わなければだめだ。今じゃない。大丈夫。大丈夫。焦るな、不審になるな。
頬を引っ張られながらも、ケラケラと遊ぶ彼に下手くそな愛想笑いを返してみせた。中々に形の崩れた笑みになっているだろう。


「まあいい、さっさと食おうぜ」


良し悪しの分からない顔をした彼は、乗り出した身を再び席に戻し食事の挨拶もなしに一人で朝食を始める。
一先ず胸を撫で下ろすと、つい先刻の「昨日も全然食べてない」という彼の発言が今になって引っ掛かった。


『私は昨日、この家に来て、何をしていたの？』


深く考えずに口を動かしていた。それが自分を苦しめると学ぶべきだ。

やはり、顔を合わせるのはかなり怖い。不自然にならないよう張った声も、僅かに震えている気がする。

彼は焦げたトーストを口に含みながら、さも当然のように返事をした。


「飯食って倒れたじゃねえか」


それを聞いた途端、腹の底から吐き気が込み上げてきた。

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