#7 ページ7
おぼつかない足をなんとか回して後を追うと、空いた片腕が進まないことに気が付いた。体は前へ進んでいるというのに、その腕は後ろへと引かれ、重心がずれ転びかける。
『うわっ』
「わっ!」
手を繋いでいる状態なので、そのまま前を走る彼も後ろへ体勢を崩しかけた。何度見ても珍しいピンクの髪に、無垢な顔だけれど濁った水色の瞳。光の灯らない彼の目が、私の一つ向こうの彼へと向けられている。
「なんだ?お前も来るか?」
「……コイツ本物だから、アイツと一緒じゃないこと忘れないでよね」
それを聞いた彼は驚きも喜びも見せず、きょとんとした掴みにくい表情に変えた。
彼らにしか理解出来ない短い会話を終わらせると、その瞳に映るのは私の番になる。仄暗い、背筋を凍らせるような、どこか不気味さを感じさせる水色が、気味悪くて仕方ない。
フランス人形を連想させる大きな目玉。ギョロリと凝視されているだけでも押し潰されそうな圧を感じ、にらめっこしていた顔を背ける。すると彼は楽しそうに笑みを浮べ、短い笑い声を零し、再び私の後ろへ目を向けた。
「AはAだ。少し違っても虐めたりしねえよ」
ほら、行こう。再度走り出す足。にっこりした愛着の湧く彼の笑みは狂気的にも捉えられ、私は虐められる気がしてならない。どうかまともな奴であってくれと宛先のない願いを只管唱える。
切実な願いを祈りなから付いて行こうと片足を踏み出した時。首元に何か気配を感じた。
「あのさ」
気配の犯人は、腕を引いていた彼であり、彼の髪が首に擦れて擽ったい。けれどその声は息の掛かる距離にあり、その上その声は親しかった友人のものでもあるから、不覚にも心臓が飛び跳ねて____
「アイツ、気分悪くなったらお前のことすぐ殺すよ」
誰がときめくかよ!!!
こんな殺人予告地味たこと、ありがたいけど知りたくなかった。そうか、彼も同じく短気なようだ。人並みの優しさというものが何故彼らには欠けているのか。
心臓を別の意味で早く鼓動させる彼からの助言を聞き入れると、首元の気配は煙のように消え去った。
門口を出たところで一度振り返ってみると、崩壊した会議場を背景に、彼は一人で立ち尽くしている。辺りがこんな風だからというのもあるが、一人ぼっちの彼の顔。それがなんだか私には、恨めしくも寂し気な小さな子供のように見えた。
49人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏(プロフ) - A_sariさん» 感想をありがとうございます✨🥹話の進め方が不安定で大丈夫なのかと自問自答することもありましたが、励ましの言葉で自信がつきました!💪神にはまだまだほど遠いと思っておりますが、ご愛読なさってくださるよう全力で取り組んでいきます🥰 (4月30日 7時) (レス) id: ebedb84d25 (このIDを非表示/違反報告)
A_sari(プロフ) - 2p小説ってなんてこう…神な作品ばっかりなんでしょうか??私、主様の2pの小説すごい好きで、上手くまとまりがあって見ててとても楽しいです!!これからも頑張ってください!👍 (4月30日 7時) (レス) @page11 id: e3f60134f8 (このIDを非表示/違反報告)
夏(プロフ) - チョコさん» コメントありがとうございます!!😭😭褒め言葉のオンパレードで泣きました。優しいお言葉を本当にありがとうございます🥹2p小説少ないですよね……個人解釈にすぎませんが、イメージ通りの2p達を描けるよう励んでいきます✨💪 (3月22日 18時) (レス) id: ebedb84d25 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ(プロフ) - 夏さん新作最高です…!!!アナザーの小説全然ないので本当にありがとうございます!!!!😭😭😭もう話し方とか性格とか解釈一致だし、読みやすいし面白いので大好きです💕これからも応援してます!ご自愛ください👍️ (3月21日 22時) (レス) @page3 id: 99327877d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夏 | 作成日時:2024年3月15日 20時