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おぼつかない足をなんとか回して後を追うと、空いた片腕が進まないことに気が付いた。体は前へ進んでいるというのに、その腕は後ろへと引かれ、重心がずれ転びかける。
『うわっ』
「わっ!」
手を繋いでいる状態なので、そのまま前を走る彼も後ろへ体勢を崩しかけた。何度見ても珍しいピンクの髪に、無垢な顔だけれど濁った水色の瞳。光の灯らない彼の目が、私の一つ向こうの彼へと向けられている。
「なんだ?お前も来るか?」
「……コイツ本物だから、アイツと一緒じゃないこと忘れないでよね」
それを聞いた彼は驚きも喜びも見せず、きょとんとした掴みにくい表情に変えた。
彼らにしか理解出来ない短い会話を終わらせると、その瞳に映るのは私の番になる。仄暗い、背筋を凍らせるような、どこか不気味さを感じさせる水色が、気味悪くて仕方ない。
フランス人形を連想させる大きな目玉。ギョロリと凝視されているだけでも押し潰されそうな圧を感じ、にらめっこしていた顔を背ける。すると彼は楽しそうに笑みを浮べ、短い笑い声を零し、再び私の後ろへ目を向けた。
「AはAだ。少し違っても虐めたりしねえよ」
ほら、行こう。再度走り出す足。にっこりした愛着の湧く彼の笑みは狂気的にも捉えられ、私は虐められる気がしてならない。どうかまともな奴であってくれと宛先のない願いを只管唱える。
切実な願いを祈りなから付いて行こうと片足を踏み出した時。首元に何か気配を感じた。
「あのさ」
気配の犯人は、腕を引いていた彼であり、彼の髪が首に擦れて擽ったい。けれどその声は息の掛かる距離にあり、その上その声は親しかった友人のものでもあるから、不覚にも心臓が飛び跳ねて____
「アイツ、気分悪くなったらお前のことすぐ殺すよ」
誰がときめくかよ!!!
こんな殺人予告地味たこと、ありがたいけど知りたくなかった。そうか、彼も同じく短気なようだ。人並みの優しさというものが何故彼らには欠けているのか。
心臓を別の意味で早く鼓動させる彼からの助言を聞き入れると、首元の気配は煙のように消え去った。
門口を出たところで一度振り返ってみると、崩壊した会議場を背景に、彼は一人で立ち尽くしている。辺りがこんな風だからというのもあるが、一人ぼっちの彼の顔。それがなんだか私には、恨めしくも寂し気な小さな子供のように見えた。

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さくらです(´゚д゚`)アルファ(プロフ) - 細かいところまで書かれていて面白いです!!!更新無理しない程度に頑張ってください(*´∀`*) (6月24日 15時) (レス) id: 4cb1df6390 (このIDを非表示/違反報告)
夏(プロフ) - 主食はだざむ*さん» ありがとうございます!💓💓オリバー可愛いですよね……先は長いですが、また登場させるつもりです!コメント励みになります🥹頑張ります!🔥🔥 (6月2日 17時) (レス) id: ebedb84d25 (このIDを非表示/違反報告)
夏(プロフ) - Mさん» そう言ってくださって嬉しいです💕☺️ありがとうございます!!頑張ります🫶🫶 (6月2日 17時) (レス) id: ebedb84d25 (このIDを非表示/違反報告)
主食はだざむ*(プロフ) - ああああ、好きすぎます!!!! オリバァァァ!!かあいいよぉ! 更新待っております、無理はなさらずに!! (5月23日 22時) (レス) id: 2b5c23a76b (このIDを非表示/違反報告)
M - めちゃくちゃ好みの話です!!😍更新待ってます🫶 (5月10日 18時) (レス) id: 09eab9de4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏 | 作成日時:2024年3月15日 20時