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目を開いた。いつの間にか眠っていたようで寝る直前の記憶は思い出せない。
霧掛かった脳はまだ働くには時間が必要なようで、体も脱力しているため動かすのが億劫だ。
大丈夫、目覚まし時計はまだ鳴ってない。
もう一眠りといこう。視界に移された空席だらけの会議机が段々とぼかされていくのを見届けて、再び眠りに就いた。
『まって嘘、まって』
会議机?え、会議机??
顔を洗わずとも目は嫌でも覚める。力の入らなかった体も跳ね起きた。見る限りだと、ここは、寝室じゃない?
冷や汗が顎を伝る。見覚えしかない。この場所を自分は知っている、というよりも、つい最近訪れたばかりだ。
何人か座れるよう個々に切り込みの入れられている、綿の詰められた長椅子。中央に近いほど低く、遠いほど高くにある円状に並べられた会議机。その横にある階段を下れば、部屋の中央に置かれた壇上。
なんてことだ。一度目を強く閉じてみるも、これは夢ではないようで、頭を抱えざるを得ない。
ここ、会議室じゃないか。それも世界会議の。
突伏して眠っていたんだ。てっきり布団の中だと思っていたのに。
明かりの消された会議室に一人。物寂しいなんて言っている暇はない。直ちに家へ帰らねば、関係者だろうと不法侵入を疑われる。知り合いになんて思われるかと、立場的にそれだけは避けたい。
どうしてここにいるのか。昨日は一体何をしていたのか。徐々に覚めてきた脳にぽつぽつと疑問が思い浮かぶが、余裕のないこの状況では、退出が最優先だ。狭い机と椅子の間を渡り階段を駆け上がると、会議室の出入り口の扉が勝手に開いた。
え?なんで開いたんだ?
もしや足音に気づいた警備員では……この会場に普段警備員いるか?今までは見たことはないな。
どうやら廊下は明かりを点けられているようで、開いた扉の向こうには逆光により人影が作られていた。
背丈からして男性だろうか。顔はよく見えないが、耳辺りまでふんわりとした髪が伸ばされて、頭からくるんとした何かが飛び出ている。
ん?くるん?
「誰かいんの?」
その分かりやすすぎる特徴から推測された人物に、思わず安堵と歓喜の声で話しかけてしまった。
『ごめん、私だよ。不審者じゃない』
よかった。温厚な彼なら大丈夫だろう。落ち着いた足取りで扉の下まで近づいてゆく。薄っすらと形の見えた顔からして、やはり彼だ。よかった。
扉の前まで辿り着く。すると次に彼はこう言った。
「…お前、殺されたいの?」
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夏(プロフ) - A_sariさん» 感想をありがとうございます✨🥹話の進め方が不安定で大丈夫なのかと自問自答することもありましたが、励ましの言葉で自信がつきました!💪神にはまだまだほど遠いと思っておりますが、ご愛読なさってくださるよう全力で取り組んでいきます🥰 (4月30日 7時) (レス) id: ebedb84d25 (このIDを非表示/違反報告)
A_sari(プロフ) - 2p小説ってなんてこう…神な作品ばっかりなんでしょうか??私、主様の2pの小説すごい好きで、上手くまとまりがあって見ててとても楽しいです!!これからも頑張ってください!👍 (4月30日 7時) (レス) @page11 id: e3f60134f8 (このIDを非表示/違反報告)
夏(プロフ) - チョコさん» コメントありがとうございます!!😭😭褒め言葉のオンパレードで泣きました。優しいお言葉を本当にありがとうございます🥹2p小説少ないですよね……個人解釈にすぎませんが、イメージ通りの2p達を描けるよう励んでいきます✨💪 (3月22日 18時) (レス) id: ebedb84d25 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ(プロフ) - 夏さん新作最高です…!!!アナザーの小説全然ないので本当にありがとうございます!!!!😭😭😭もう話し方とか性格とか解釈一致だし、読みやすいし面白いので大好きです💕これからも応援してます!ご自愛ください👍️ (3月21日 22時) (レス) @page3 id: 99327877d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏 | 作成日時:2024年3月15日 20時