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テスト1日目。
いつもよりも朝早く登校した私は教室で1人、テスト範囲の復習をしていた。
勉強を開始して数十分後、ガラッと音を立てて扉が開いた。
「おはよう」
扉の方を見た私と目が合ったジェノくんは、いつもの笑顔でそう言った。
「おはよう」
「今日は早いんだね」
「テストだから復習したくて。ジェノくんは？」
「んー俺もそんなとこ。今日、自信ある？」
「まあまあかな」
曖昧な返事を返した私に困ったように笑って、『だよね、俺も』と言うとジェノくんは席についた。
ジェノくんと2人きりの教室に、何故か緊張しながらノートを捲る。
会話が終わった教室に私がノートを捲る音と、ジェノくんがリュックの中をあさる音が響く。
…気まずい。
ジェノくんがきてからすっかり勉強に集中できなくなった私は、席を立った。
私が席を立った音に驚いたのか、私の方を見たジェノくんはどうしたの、と声をかけてきた。
「ちょっと、喉が渇いて。一階の自販機にでも行こうかなって」
「今日ちょっと暑いもんね」
うん、と返事をして外に出た私は廊下を歩きながらあの夏のことを思い出していた。
夏、自販機、ジェノくん、私。
こんなにも同じ条件が揃っているのに、何も言ってこないジェノくんはきっとあの日のことを覚えていないんだろうなあ。
まあ、私なんかのこと覚えてるわけないか。
ジェノくんは優しくてかっこいいから、きっと色んな女の子と話す機会が多いんだろうし。
はあ、とため息をついてジュースを選ぶ。
この自販機には、あの日私が買ったあの缶ジュースはない。
「…なんでこんなに覚えてるんだろ」
変なの、と呟いた私の声は誰もいない朝の廊下に溶けて消えていった。
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作者名：きなこもち | 作成日時：2023年2月9日 19時
