梶井基次郎─後日談─ ページ10
数ヵ月後。
基次郎とは案外続いている。
相変わらず研究室に篭って研究を続けていたりもするが、其は其で気が楽だ。
逢引の時は科学の話は極力しないように、と言えば程々にして呉れた事もあるだろう。
最近はまともに会えていないのだが。
所で今日、探偵社が珍しく臨時休業日としてポートマフィアの皆と何やら催しをするらしい。
私は当日に知ったが、探偵社に行けば直ぐ女性陣に化粧を施されドレスアップされる。
「………………え?」
其の流れでポートマフィアに連れ行かれたが、敵同士がこんな事をして良いのだろうか。
厭、敵同士で交際をしている辺り許されると云えば許されるのかも知れないが。
「…此何ですか?」
「もう少ししてのお楽しみですわ!」
会場となった部屋を見回すが基次郎や中也君、其に治君も居ない。
私は怪訝に思いながらもちまちまとご飯を食べたりしていた。
すると、突然部屋が暗くなり、驚く。
ざわめく会場の中、誰かが私の持っていた食器を奪い机にそっと置いたかと思えば明るいステージ?の様な場所に私を引っ張って行く。
「え?え、ちょっと!!?」
「はいどーん!」
「ちょ、未だ心の準備が、って、うわぁあ?!」
治君の声がして、其をかき消す様に基次郎の声。
ステージの上で二人して顔を見合わせる。
「えーと、だね、柚」
「え、あ、うん、何?」
混乱し過ぎて逆に冷静になる私。
「結婚して下さい!」
ごめん前言撤回。混乱した。
「は………?」
「君と家族になりたい、科学の事ばかりじゃなく、最近はその事を考えて色んな人に相談もしてたんだ。其でこうして場所を作って貰って、其で、えーと」
「ちょっと待って、最近全然会えなかったのって真逆…」
「い、いえーす…」
顔を真っ赤にして是の意を示す基次郎。
私は思わぬ理由に驚く。
「僕はいつも科学の事ばかりだからこういう事に詳しく無くて、矢張り色々な意見が欲しくて…厭、其よりも、その、返事は……」
「え、良いよ?」
「へっ?」
「だから、良いよ。結婚しよ」
ステージの上で、周りの人の存在さえも忘れながら話す。
ゆっくり近付いて彼の手を取り、微笑み見上げる。
「あの変態科学莫迦がこんなに考えて呉れたんだもん。其に基次郎の家族になれるの、凄く嬉しい」
基次郎が感極まった様に私を抱き締める。
其から拍手が起こり、私は急いで舞台を下りた。
嗚呼、そういう事か。してやられたな。
嬉し恥ずかしにそう思った。
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ゆ - 読み終わった!ちゃんと全ルート書いてくれるの神ですか?神ですね。好きです。ありがとうございました! (8月4日 16時) (レス) @page11 id: c79aedafe2 (このIDを非表示/違反報告)
アスパラガス - 本当にこの話大好きです!二年前くらいに、もう既に読み終わっていたのですが、いてもたってもいられなくて、もう一周読んでいました…!ある意味中毒。何回読んでも大好きです!これからも頑張ってください!応援してますよ! (2022年5月30日 0時) (レス) @page11 id: 3c601836b6 (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - 読み終わった……はぁ……すき、ほんと好きだわ、あんこの書く話。何回ニヤニヤさせられたか…ww (2019年12月20日 15時) (レス) id: b09f89d760 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 完結おめでとうございますー!初めて読ませて頂きましたが、ほんっとにきゅんっとさせられました笑しかも全員のオチを書くという神対応!書くの大変だったと思います!これからも頑張って下さい! (2019年6月1日 11時) (レス) id: 8f1f373125 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - のっちさん» 遅くなってすみません!のっちさんありがとうございますー!!!精一杯走り抜けてまた新作考え中です!笑 また是非お見掛けしたら読んでやって下さいませー!お互い頑張りましょう!!御愛読、ありがとうございました! (2017年7月15日 7時) (レス) id: baffe8ba31 (このIDを非表示/違反報告)
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