森鴎外 ページ5
「おや…君から来て呉れるとは珍しいねぇ」
「……今日はエリスちゃんは?」
「其が少し怒らせてしまってねぇ。今は中也君とお購い物さ」
“そして其を尾けていた、と”と云えば図星だと云わんばかりに笑う。
今は、少しだけエリスちゃんに嫉妬してしまった。
私は、森さんの手を引っ張って連れて行く。
「え、え、如何したんだい柚君?」
「一回しか云いませんからちゃんと聞いてて下さいね」
人気のない所で向き直り、云う。
「好きです。森さんが大好きです。森さんとの年齢差なんて如何でも良いんです。私は貴方の恋人になりたい」
がっついている女と思われはしないだろうか。
いや、其でも良い。彼に想いを伝えられた事が一番喜ばしい事実だ。
然しやけに静かだ。私は僅かに見上げた。
すると、口許をおさえ顔を真っ赤にする森さんの姿が。
「へっ…?」
つられて私も赤くなる。
森さんは、ぼそぼそと言葉を紡いだ。
「あの、私、中年だけれど、大丈夫なのかい…?其に私はマフィアの長だ。危険な目に遭う事があるかも知れないよ。其でも、本当に大丈夫かい…?」
其なら、私の答えは既に決まっている。
「武装探偵社で鍛えた私を一般的な女性と同じにして貰っては困ります」
ぐっと森さんの手を握ると、“いたたたたた”と云われた。握力には自信があるのだ。
「…大丈夫そうだね」
くすくすと笑われる。
私は力を抜いて、普通に手を握った。
「森さんは、私の事を如何思いますか?」
「そりゃあ勿論…」
“今直ぐ連れ去って妻にしたい位愛しいさ”
嗚呼、そうやってはっきりと断言して呉れるのが、本当に嬉しいなぁ。なんて思ったり。
森さんの様な人が好きだと前々から思っていた。
年齢がなぁ…なんて思ってたけど、結局は年齢なんて大した問題じゃ無かった。
好きなら好きで良いんだ。
そう思った。
「森さん」
「何だい?」
「好きです」
途端にまた真っ赤になってしまう森さん。
何だか可愛いと思ってしまったり。
「…最近の若い子には参ってしまうよ」
「森さんもこの間云ったじゃないですか。生涯的に〜って」
「厭ね、あの時は愛しさが募って思わず云ってしまったというか…」
「でも、多分あれが無かったら私気付かなかったかも知れません」
貴方に既に恋心を抱いていた事に。
貴方が好きだという事に。
「そうなのかい…?…其なら、あの時云えて本当に良かった」
少し間を置き、森さんが云う。
“私も君が好きだよ”と。
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ゆ - 読み終わった!ちゃんと全ルート書いてくれるの神ですか?神ですね。好きです。ありがとうございました! (8月4日 16時) (レス) @page11 id: c79aedafe2 (このIDを非表示/違反報告)
アスパラガス - 本当にこの話大好きです!二年前くらいに、もう既に読み終わっていたのですが、いてもたってもいられなくて、もう一周読んでいました…!ある意味中毒。何回読んでも大好きです!これからも頑張ってください!応援してますよ! (2022年5月30日 0時) (レス) @page11 id: 3c601836b6 (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - 読み終わった……はぁ……すき、ほんと好きだわ、あんこの書く話。何回ニヤニヤさせられたか…ww (2019年12月20日 15時) (レス) id: b09f89d760 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 完結おめでとうございますー!初めて読ませて頂きましたが、ほんっとにきゅんっとさせられました笑しかも全員のオチを書くという神対応!書くの大変だったと思います!これからも頑張って下さい! (2019年6月1日 11時) (レス) id: 8f1f373125 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - のっちさん» 遅くなってすみません!のっちさんありがとうございますー!!!精一杯走り抜けてまた新作考え中です!笑 また是非お見掛けしたら読んでやって下さいませー!お互い頑張りましょう!!御愛読、ありがとうございました! (2017年7月15日 7時) (レス) id: baffe8ba31 (このIDを非表示/違反報告)
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