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困り事62つ目 ページ15

津守結という男は、どこか掴み所がなくふわふわとしていて、少し寂しがり屋だが優しい俺たちの弟分である。

そんな弟分が幼い頃から虐待されているらしいという話は正しく青天の霹靂だった。有り得ないと一蹴したかったが、同期の一人から送られた音声データはそれを一蹴できない程の説得力を持っていた。

詳細を聞きながら、報告書を見るより、関係機関から来た講師の話を聞くより、実情はずっと恐ろしいものだと感じた。身近な人が虐待の被害者で、虐待のフルコースとでも言わんばかりの行為を、それが「当たり前」だと受け入れてしまう程長い間されてきたこと、それに気付けなかったこと。

本人がこれが異常だと気付かなかったら、仲間たちが気付かなかったら、俺は何も気付けないまま、知らないまま、彼は彼の両親のために死んでいただろう。それがたまらなく情けなく、恐ろしかった。

彼の実家に乗り込みかねない勢いで怒り震えている松田を抑えながら、それでも心の中で安堵した。まだ間に合うのだ。俺は何も気付いていなかった。同期からのメールで知ったくらいだ。だが知ってしまえば違和感は幾らでも浮かんできて、もし俺を庇ったあの時死んでいたらと考え震えたものだ。高木からも津守が意識を失う寸前に放った言葉を聞かされ、心底ゾッとした。しかしまだ生きている。生きようとしてくれている。

ならば絶対に助けてやろうと、罪を犯した者にはきちんと償わせなければと意気込んだ。しかしどうだ。本人から語られる予想を遥かに超えるおぞましい行為の数々に、罪を償わせるだけでは足りないとふつふつと沸く怒りを抑えることが出来ない。

そんな中で困ったように笑いながらもそれが俺たちに不快な思いをさせたのではと不安そうな声を出す津守は、やはり優しい。しかしその優しさは、今は逆効果である。

それに加えてとんでもない事を言い出すものだから、萩原と高木はキレたし、根源を根絶やしにしなければという決意は強くなった。

「両親は凄く慎重で、人前で酷い扱いをする事はないんです。部署も違いますし、もし証拠不十分で令状が取れなかった場合、ぼくが実家に行くのでそこを張ってくれれば現行犯逮捕は幾らでも出来ると思うので、いつでも言ってくださいね」

萩原が「令状は絶対に取るからお前は絶対に実家に行くな」と津守に対して初めて強く命令しているのが聞こえたが、全くもって同感である。己の怒りをなんとか律し、暴れる松田を抑えながら絶対やめろと頷いた。

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きゃすみ(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました!!素敵な作品を作ってくださりありがとうございます!! (2023年3月10日 14時) (レス) id: e6f2b24efc (このIDを非表示/違反報告)
セイカ - 更新したんですね!相変わらずめっちゃ良かったです! (2022年12月23日 12時) (レス) @page15 id: bb7bb5003e (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 更新お疲れ様です! (2022年12月22日 21時) (レス) @page15 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
ライキ - うわぁぁぁぁぁぁん!!!結くんーー!!!!!仲間たちを頼ってくれてありがどうぅぅぅ!!!! (2022年12月7日 18時) (レス) id: c3cdfe919e (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - めっちゃ好きな作品、、、!最高、、、!これからも無理せずに更新頑張って下さい!応援してます! (2022年11月24日 19時) (レス) @page12 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんこ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2022年7月9日 19時

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