困り事49つ目 ページ2
ちょっくら頭冷やしてくるわ、と部屋を出て行った班長と松田さんに困惑する。
言われたことを頭の中で反復して、それでも分からない。侮辱とは、どういうことだ？だって、心配するのは当たり前じゃないか。ぼくなんかより、班長自身が傷付いていたら、大事な指輪が壊れていたら、予定がズレてしまったら、それこそ大変なことだ。
分からない。大事に思っているからこそ心配したのに。
助けを求めるように渉くんを見れば、彼も困ったように笑って首を振るばかりで、やっぱり分からなかった。
「逆の立場で考えてみようか」
「え？」
「例えば高木くんが結の目の前で事故に遭って5日間目が覚めなかったとして、お前は心配だよね」
「はい」
「でも目が覚めた高木くんは満身創痍にも関わらずほぼ無傷の結の心配をしてる。どう思う？」
「……ぼくのことより、自分の身体の心配をしてほしい」
「うん、つまりそういうことだよ、結」
…つまり班長は、ぼくが自分の心配をしなかったから、怒った？どうして？両親はぼくに煙草を押し付けた時も、殴られ蹴られ骨が折れた時も、浴槽に頭を沈められて息ができなくて意識を失った後も、生きているなら大丈夫だと、笑ってそう言ったのに。
「…あ、そうか」
「分かった？」
「はい。目の前で死なれちゃ、後が悪いですもんね」
納得！と顔を輝かせる。途端、ガッと頬が掴まれて酷く怒った顔をした研二くんが言った。
「二度と言うな」
「えっ？」
「そういう発言が俺たちを侮辱してるって班長は言ったんだ。なんも分かってねぇよお前。俺たちはお前だからこんなに心配してんだ。お前が怪我すれば心配だし、意識不明の重体だと聞いて心臓が止まると思った。この5日、お前が目覚めなくて食事も喉を通らなくて松田に無理矢理食わされもした。お前はそんな俺の心さえ辱めるつもりか」
顔をどんどん悲痛に歪めながら、最後には懇願するようにぼくを見た。その瞳に困惑するぼくが映る。…情けない自分の顔に、なんだか無性に泣きたくなった。それでも答えなければと口を開く。
「……ご、めんなさい、もういいません」
「うん、俺も怒ってごめんね」
「…帰りましょうか、そろそろ」
「そうだね。起きたばかりだし無理させちゃ悪い」
「じゃあ結くん、お大事に」
「また来るね」
そのまま足音が遠ざかりシンとする病室。彼らに心配されている。それをぼく自身が侮辱し、傷付けた。それが何故かしこりのように残り、胸が酷く痛んだ。
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きゃすみ(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました！！素敵な作品を作ってくださりありがとうございます！！ (2023年3月10日 14時) (
レス) id: e6f2b24efc (このIDを非表示/違反報告)
セイカ - 更新したんですね！相変わらずめっちゃ良かったです！ (2022年12月23日 12時) (レス) @page15 id: bb7bb5003e (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 更新お疲れ様です！ (2022年12月22日 21時) (レス) @page15 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
ライキ - うわぁぁぁぁぁぁん！！！結くんーー！！！！！仲間たちを頼ってくれてありがどうぅぅぅ！！！！ (2022年12月7日 18時) (レス) id: c3cdfe919e (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - めっちゃ好きな作品、、、！最高、、、！これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してます！ (2022年11月24日 19時) (レス) @page12 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
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