困り事52つ目 ページ5
リハビリが始まった頃、ぼくが入院してから(意識が無い間のことは分からないが医師が言うには来ていないとのことなので)初めて両親が見舞いに来てくれた。
ノックの音に返事をして、仕事終わりに来てくれていた研二くんが「高木ちゃんかなぁ」と言うのに「そんなに毎日来なくても大丈夫だよ」なんて返して笑っていたら入って来たのは両親だったものだから一瞬呆けてしまった。
まさか来てくれるなんて思っていなかったのだ。行ってはいけないと言われた病院に入院している、言いつけを破った悪い息子であるぼくの見舞いに来てくれた。なんて優しい両親なんだろう。
嬉しくて思わず顔が緩むのがわかった。
「結、怪我の具合は?」
「大丈夫だよ。包帯は大袈裟だけど大したことないんだ。心配かけてごめんなさい」
「良いのよ。それより、あなたの治療をしてくださった先生はどちらに?」
「あ、俺案内します。事故当日は現場に居た同僚が話を聞いてましたけど、家族しか聞けないこともあると思うので」
「あら、ならお願いね」
そうして連れ立って行ってしまう母と研二くん。病室にはぼくと父だけとなり、父にも言いつけを破ったことへの謝罪をする。父はそんなぼくの顎をガッと掴んで、顔を近付けて畳み掛けてきた。
「テメェバレてねぇだろうな?」
「テメェがノロマだからこうなったんだろグズ。もしなんか医者に言われた時ゃテメェわかってんだろうな」
「つかいつになったら殉職すんだお前は?幾つだと思ってんだもう24だぞ。18で警察になってから6年だ。いつまでウダウダやってんだ?とっとと死んで金入れろや」
ざっと顔が青くなる。
そうだ、普段からそこに在ることに見慣れてしまって、傷があることを忘れていた。この傷が他人に見られることは恥である。そう教わって、ずっと見られないよう徹底してきたのに。なんて迂闊なのだろうか。
「す、すみ、ません…」
「だからテメェはダメなんだよクソが」
掴まれていた顎を離され、そのまま項垂れる。父はここで躾をする気はないらしく、椅子に座り直して、むっつりと押し黙った。
暫く沈黙が続いた後、母とぼくを診てくれている医者、それから研二くんが戻ってきて「御家族揃って説明をさせて貰いたい」と言う。研二くんは荷物を取りに来ただけのようで、「じゃあまた来るな」と告げて病室を出て行った。
それから家族揃って身体の状態、入院期間を改めて説明された。古い傷については何も言われず、少しだけほっとした。
995人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きゃすみ(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました!!素敵な作品を作ってくださりありがとうございます!! (2023年3月10日 14時) (レス) id: e6f2b24efc (このIDを非表示/違反報告)
セイカ - 更新したんですね!相変わらずめっちゃ良かったです! (2022年12月23日 12時) (レス) @page15 id: bb7bb5003e (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 更新お疲れ様です! (2022年12月22日 21時) (レス) @page15 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
ライキ - うわぁぁぁぁぁぁん!!!結くんーー!!!!!仲間たちを頼ってくれてありがどうぅぅぅ!!!! (2022年12月7日 18時) (レス) id: c3cdfe919e (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - めっちゃ好きな作品、、、!最高、、、!これからも無理せずに更新頑張って下さい!応援してます! (2022年11月24日 19時) (レス) @page12 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ