困り事19つ目 ページ20
警察学校の卒業式から幾月か経った。
独身寮に入ってからも警察学校に入った時と変わらずで、給金は必要な物以外全て両親へ送金しているし、飲み会に付き合う必要のある場合は残業をして、或いは少しだけズルをして(食事を抜いて)。
実家では食事はあってないようなものだったし、警察学校での日々が異常事態である為、現状大した問題は無かった。親しくして貰った5人は皆部署が違うから会う機会が無くて少し寂しい、という事以外には。内2人については連絡も取れないのだから致し方ない。大方公安かそれに殉じる役職に就いたのだろう。あの2人に限って警察を辞めるなんて事は無い筈だから。
さて、そんなある日の事。その日、11月7日。都内…否、日本全国が不安と恐怖で揺れていた。
都内のとある2箇所に爆弾が仕掛けられたのだ。勤務する交番が近くだった事もあり、責任者とその他数名の事務員と警官等を残してぼくも現場に駆り出された。機動隊のみでは対処しきれない所の補助に当たる為だ。
現場の総指揮に従い、ぼくは交番勤務の先輩と共に未だ未解体の爆弾があるというマンションの避難誘導及び規制を行った。
貴重品を置いて来た、どうしても取りに戻りたい物がある、爆発はしないのか、爆発した場合に自分たちの住居はどうなるのか、その他諸々。その不安も憤りもこの状況下では当然であるが、ぼくたちは不安を煽らない様に、きちんと無事に彼らを日常に戻せるように、死力を尽くしている事を住民に理解して頂く必要がある。だから必死で説得した。大丈夫です、爆発物処理のプロが今対処していますから、きっと無事に終わりますと。皆さんの確実な安全確保の為に建物内には決して入らない様にお願いしますと。
…ただ、この喧騒の中で少し気になる女性が居た。挙動不審だ。家が無くなるかもしれない不安とはまた違った不安の様に思え、ぼくはその女性に話を聞く事にした。
最初は気丈に振る舞っていたが、しつこく食い下がれば女性はヤケになった様に叫んだ。
「生意気なガキをあの中に残して来たのよ!ああ腹が立つ!放っておいてくれれば良いものを!さっさと死ねば良いのよあんなガキ!」
機動隊員が何処かに無線をしている。中に居る爆発物処理班に1名逃げ遅れがある事を伝えているのだろう。ぼくは質問を続ける。
「何階にお住まいですか」
「お子さんのお名前は」
「どうしてこんな事をしたんですか」
質問中、女性はむっつりと口を噤み、答えてくれる事は無かった。
1486人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
侑(プロフ) - ついに親友公開と爆処組に真実を、!!高木ほんと優しい…萩と松田も…更新楽しみにしてます!! (2022年6月6日 5時) (レス) @page45 id: 8afc6fd8a6 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - とても面白いです。更新頑張ってください❗ (2022年5月6日 18時) (レス) @page33 id: b70e4d72d6 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - またの更新楽しみにしています! (2022年5月2日 19時) (レス) @page33 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
れぃと(プロフ) - おっ…!?ついに、ついにか……!? (2021年7月5日 22時) (レス) id: 40283c6b11 (このIDを非表示/違反報告)
深夜 - 夢主くんは幸せにして欲しい… (2021年7月4日 23時) (レス) id: b4c500a793 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ