【名探偵コナン】警察学校に入学したら同期の兄ちゃんたちに甘やかされて困ってる【男主】

困り事16つ目 ページ17

「はぁ？」

鬼塚教官げきおこなう。そんな下らない事を考えながら直立する。

「たまたま誘拐された女児を見つけ…たまたまその誘拐犯を確保し…そいつがたまたま過去に諸伏の両親を殺害した被疑者だっただと！？」

「そうであります！！」

「そんな戯れ言誰が信じるか！！」

「いや、本当に…」

「風呂掃除をサボって外出した言い訳にしては…質が悪過ぎる！！」

「でも本当なんです！」

風呂場を開けようとする教官をなんとか時間稼ぎして引き留めなければと話題を探す。先の事件については本当に事実でしかないのだが教官が信じてくれない為、どうしたものかと腕を掴み引き留めながら考えていると、教官がふと「全くなんの為に津守を付けたと思ってるんだ…！」と言うのに、ぴこんと思い付いた。

これで解決すれば万々歳だし、ヒントがあれば上々。このタイミングで聞くのはついでのようで申し訳ないが、気になっていたのは事実。悪いな津守。心の中で謝って、真剣な顔を作り教官に尋ねた。

「教官、その津守の事なんですが」

「なんだ！」

「過去に家庭環境に何か問題があった事はありませんでしたか」

「そんな事を言ってまた煙に巻くつもりか？今度という今度はもう許さんぞ！！風呂掃除が終わってなかったら…全員「退職願」を書いてもらうからな！！」

にべも無く、か。タイミングが矢張り悪かったらしい。溜息を吐きたくなるのを堪えて風呂場に入る教官を追う。

脱衣所を見て、今度は風呂場を開けた。無論掃除に余念はない。教官が「これを一週間続けるように」と言伝て立ち去ってから風呂場の奥を覗くと、そこには身を寄せ合って眠りこける5人が居た。

津守争奪戦の末勝ち取った萩が津守をぎゅうぎゅうに抱き締めて眠っている。クソ、幸せそうな顔しやがって。

穏やかな寝顔(津守は少し苦しそうだが)を晒す5人に、まったく、僕もそっち側がよかったものだと思う。

…そうか、津守はまだ18歳だったな。覗き込むと少し幼い寝顔に思い出す。

さらさらと頬に流れる髪を耳にかけてやっていると、珍しく緩められた制服の隙間から何か小さな切り傷が複数見えた。

意外にヤンチャだったんだろうか。僕も木登りをしていて落ちた拍子に枝で胸元を傷付けた事を思い出しながら寝崩れた制服を軽く整え、頭を撫でてやる。

頭を撫でるといつも緊張する少年。いつか全てを聞けると良いな。そう思った。

この時何故好奇心のまま服の下を暴かなかったと後悔するのは、何年も先の事である。

困り事17つ目→←困り事15つ目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す