第二十三話 ページ23
「何故仲間に教えた?」
まず最初にこれを尋ねた。俺は彼女の身体を借りた際に言っている。「余り口外しないでくれ」と。
「…俺一人ではどうにも彼女を守れないと思ってな。志保と彼女を天秤にかけた時、俺は迷わず志保を取るだろう。それは君も困る。だろう?理由はそれだ」
思わず舌打ちが出る。萩原が目を細め怒り、松田はソファをライと頭にぶつけようと浮き上がらせたが、それは家主に悪いと手で制した。
松田は怒ったが、俺も出来ればそうさせたかった。一人の警察官として、あっさりとすぐ傍に居る少女を見捨てると断言した男が憎たらしく思ったのだ。
「俺は今も危なっかしくぼんやりしてこちらの話を聞いてもいない彼女を守る為ならば約束とて破る。彼女の秘密をあのボウヤに隠すのも至難の業だ。人の良い彼女なら許してくれると思うし、事件捜査の協力も仰げると思うがね?」
「埒が明かねぇ。筆談は時間かかるしアイツの身体借りたらどうだ?」
「駄目だ。彼女の身体に入り込むのは容易だが、彼女の魂に入り込み勝手に脳内信号を操作して俺の意志に合わせるのは彼女の脳や身体に大きな負担を負わせてしまうし、何より回数を重ねると俺たち以外も入り込みやすい身体になってしまう」
「チッ、仕方ねぇな」
松田はそれを聞くと食い下がり、俺の使っていたペンで紙に何かを書き始めた。
「今度は松田君だな?柚の事を随分気に入っている様だ」
「なぁなぁ、柚ちゃん俺らの声も聞こえないくらい無心でクッション抱いてるから早く済ませてくんね?」
通り抜けてしまう指で彼女の頬をつつきながら萩原が言う。俺は致し方なく、妥協案としてある事を取り上げた。
「お前が確実に信頼出来て且つ言い触らさないという確証がある人間には伝えても構わない。但し、彼女を事件に巻き込むな。彼女に凄惨な殺人現場を見せたくはない。怖がりで優しい子だから、どんな事情があれ傷付かせ、トラウマを負わせかねない。故意でも偶然でも、その現場を見せて巻き込む事は絶対にやめろ」
「随分と過保護じゃないか。惚れたか?」
「馬鹿言うな。彼女は俺たちや工藤新一君や少年探偵団を名乗る子らとは違う。慣れさせたくないんだ、分かってくれ」
彼女は俺達が伝えた機密情報を知っているとは言え一般人に変わりない。血腥い事件には特に巻き込みたくないのだ。
「……OK、努力しよう」
肩を竦めるライ。どうやら成功だとほっと息を吐き、彼女に声を掛けた。
些か反応は遅かったが。
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ますしん - なかなか無い素敵な小説ですね!続きが気になります!これからも応援してます!! (2019年11月7日 0時) (レス) id: 46f80c1807 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2019年8月6日 0時) (レス) id: f826ed1a12 (このIDを非表示/違反報告)
コーヒー牛乳 - すごく面白いです!繰り返し読んでますw更新楽しみにしてます!応援してます! (2019年5月23日 23時) (レス) id: a8a10a0263 (このIDを非表示/違反報告)
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