第十九話 ページ19
昨夜の事もあり、私たち共通の場所には行かないだろうと先ず空家を散策する事にした。
電車待ちの間に誰かに押されて線路に危うく落ちそうになったり、盆栽が私の目の前に落ちてきたりもしたけど、今の私にはそんな事より彼等を探す事の方が重要だった。
あちこち動き回って、ふと私は家の場所を知らないし昴さんの所に居ないかと思い電話をしてみた。
「もしもし昴さん?今そちらにヒロさんでも明美さんでとお邪魔してないですか?」
『柚か。俺には視えないから断定は出来ないが居ないんじゃないか?他の霊に聞いた方が早そうだが』
「あっ、そうですね!すばるんありがとうございます!」
『日本には灯台下暗しという言葉もある。まだ行っていない近場を探す事を勧めるぞ』
何やら私が居る所ばりに騒がしい所に居るらしい彼に礼を述べ、取り敢えず最初に避けたポアロに行ってみる事にした。
結論から言う。居た。普通にあむあむの後ろで笑ってた。安堵やら何やら諸々の感情が押し寄せて深い溜息が出る。
顔を上げたらハギさんと目が合った。嬉しそうに手を振り、後ろを見てみろと言わんばかりに指差す。
それにつられる様に振り向けば、爪楊枝を咥える伊達さんが居てはちゃめちゃにびっくりした。
皆いつも通りの姿でそれに酷く安堵したのも否めない。
「お前やぁっと此処来たのかよ。家出てから遠回りばっかりしやがって」
「え、は、え?アンタらまさかずっと…」
「そうだよ!探してくれてたんだよね?ありがとう」
ひょっこりとガラスをすり抜けてきたヒロさんとハギさん。明美さんは居なかったけど、とにかく揃ったからには謝り倒さなければ気が済まない。私は急いで路地裏に呼び込んだ。
「えっと…その、すみませんでした!初めて見たので気が動転してしまって…虫が良い話だけど、出て行ってほしいなんて思ってません。ちゃんと2時までに寝るし、次はあんなに怖がらないと思うから…また、私の家に来て下さいませんか…」
自信が無くなるにつれて声が小さくなる。彼等は優しいから、怖がらせると分かっている相手に好んで近付きはしないだろう。そう思っていたのだが。
「実は昼に行くつもりだったけど柚ちゃん凄く思い詰めた顔して出掛けるし、探してくれてるってすぐ分かったから伊達と連絡取り合いながらポアロで待ってたんだよね!何にせよ、柚ちゃんに探して貰えて嬉しかったよ」
微笑むハギさんに固まる。
…コイツら生きてたら顔面殴り飛ばしてた。
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ますしん - なかなか無い素敵な小説ですね!続きが気になります!これからも応援してます!! (2019年11月7日 0時) (レス) id: 46f80c1807 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2019年8月6日 0時) (レス) id: f826ed1a12 (このIDを非表示/違反報告)
コーヒー牛乳 - すごく面白いです!繰り返し読んでますw更新楽しみにしてます!応援してます! (2019年5月23日 23時) (レス) id: a8a10a0263 (このIDを非表示/違反報告)
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