第十一話 ページ11
「久し振りだな、ライ」
「…随分と口が軽くなったな、スコッチ」
目を開いた少女の口から出てきたのは、普通に生きていれば知る事のないコードネーム。彼はスコッチなのだと空気の変化で悟り、俺の偽名を呟いただけの少女をこの家へ連れ込んだ事は正解だったとほくそ笑む。
「いやー、死んだら話せる奴が少なくてさ」
彼の言葉だ。あの軽薄そうだが丁寧な口調は変わらない。
「あの時は悪かった」
スコッチのマシンガントークを遮り言えば、スコッチも口を噤む。
「あれはお前のせいじゃない。早とちりした俺の失態だ。ゼロの足音なら聞き慣れてたのに…幼馴染失格だよな」
哀し気に笑って言うスコッチは、本当に俺を責めていない様で、矢張りこの男は光に生きる者だと呆れる。
俺が何も言えないでいると、スコッチが愉悦の色を浮かべ声音を変えて「お前こないだ正体バレそうになってたろ」と言う。
「…居たのか?」
「ゼロの後ろに居たよ。俺は明美ちゃんが居ないからすぐ分かったけど」
「彼に霊感がなくて助かったな」
「あ、お前からの話ってそれだけ?だったら俺のお願い聞いてもらって良いか?」
数年悩んで悔やんで死んでからどう詫びようなんて考えていた事をあっさりと“それだけ”と片付けられた事にああこんな奴だったと思う。
了承すれば、ぱっと笑ってお願いを口にする。
「この子…柚ちゃんは、死に直結する不慮の事故に巻き込まれ易い。その度色々な方法で助けてるけど、彼女が鈍すぎて危険に気付かないんだ。出来れば、生きて彼女に触れられるお前も守ってやってほしい。俺たちじゃ防げないものもあるから。あ、あとこれあんま口外しないでくれよ?柚ちゃん、親友にも俺たちが視えること、ゼロの正体とか隠してくれてるからさ」
「随分と彼女を気に入ったんだな」
「まぁな!この子めっちゃ面白いし、この町に染められてない綺麗な子なんだ。…驚いたよ、この若さで善悪は一個人の感情で決められないなんて明言できる子はそう居ない」
「…約束しよう」
「助かる!あ、あと最後。ゼロをあんま嫌わないでくれ」
頼んだぞ、と告げると目を瞑った彼女からスコッチの気配が消える。それとほぼ同時に彼女の身体がくず折れ、こちらに倒れ掛かってきた。どうやら眠っている様だ。身体を貸すのは負担になるのか、と考えつつソファに寝かせ、手頃な時間に起こす事にした。
……この少女は何かと役に立ちそうだな。
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ますしん - なかなか無い素敵な小説ですね!続きが気になります!これからも応援してます!! (2019年11月7日 0時) (レス) id: 46f80c1807 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2019年8月6日 0時) (レス) id: f826ed1a12 (このIDを非表示/違反報告)
コーヒー牛乳 - すごく面白いです!繰り返し読んでますw更新楽しみにしてます!応援してます! (2019年5月23日 23時) (レス) id: a8a10a0263 (このIDを非表示/違反報告)
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