どういうわけか、煉獄さん。3【煉獄杏寿郎】 (ページ29)

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無自覚と心ページ29

『久しぶりですね。』

蕎麦屋の前について、Aが一言呟いた。

「うむ！しばらく来られていなかったな！」

言いながら杏寿郎さんが扉を開ける。

一歩踏み入れると相変わらずいい出汁の香りがして、気持ちが休まる。

店内には誰も人はいなかった。

それもそうだ。まだ7時前なんだもの。

退院許可こそもらっていたけれど、流石に杏寿郎さんが迎えに来た時間が早すぎたから、私は蝶屋敷に置き手紙をして、出てきた。

(杏寿郎さんが早く来られるのは予想していたけれど、ね。)

お店に入ると、

「おぅ！随分と久しぶりじゃねぇかァ!!」

と、店主さんが迎えてくださった。

座りな！と通されたのは、以前に来た時も座った場所。

「ありがとうございます！」

と笑顔を向ける杏寿郎さんにつられて、私もお辞儀をした。

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「んで、二人はどうなったんだァ？」

？？？

店主の言葉に、二人共首を傾げる。

それを見た店主は、苦笑いすると、

「だからよォ、俺ァ野暮は嫌いだが、その、二人は恋仲になったのかって聞ィてんのよ！」

少し恥ずかしそうな店主と、ようやく理解した二人は、目を見開くと、

『あ、えと、』

「うむ！俺たちは夫婦になりました!!!!」

ドギマギするAをよそに、煉獄がはっきりと答えた。

「は、え?!め、夫婦かい?!そりゃァまた一足飛びだねェ。」

と、頭を掻きながら店主は嬉しそうに笑った。

「兄ちゃんがよォ、姉ちゃんの事を"猫みたいだ"って言った時はさすがの俺も、そりゃないぜ！って思ったもんよォ。」

(ああ、あの時ね。地味に私がショックを受けた事、杏寿郎さんは未だに知らないままなんだよね、。)

Aは心の中で苦笑いした。

すると、

「では親父さんは、俺が彼女を好いていることを知っていたのですか！」

と煉獄が店主に聞いた。

それを聞いて店主は、

「知るも何もお前さん、姉ちゃん見る目が、恋する男そのものだと思うぜェ？ま、俺が年の功なのかもしんねェがな!!はっはっは!!そーかィそーかィ!!めでてーなァ!!」

と普段見たこともないような破顔を向けた。

目を見開きながら、

「む、そうなのか？不死川にも言われたが、」

と、何やらゴニョゴニョ言っている杏寿郎さんと、笑っている店主さんを見て、私はなんとも言えない穏やかな気持ちになった。

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