どういうわけか、煉獄さん。3【煉獄杏寿郎】 (ページ25)

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月と炎の事情（番外編）ページ25

「あ、あの、月柱様！」

とある任務で女性隊士達を率いることになったAは、任務帰りに彼女たちに囲まれていた。

普段の光景とはまた違うそれに、Aは一瞬、半歩下がった。

『は、はい、？』

黒髪の姫カットになったAは、柱と呼ばれるには幼い雰囲気も残していたが、確実に皆を指導する者だった。

しかし、

「炎柱様とのお話が聞きたいのです!!」

どうやら彼女たちはAと、年相応の恋の話がしたいようだ。

『ぅえ?!、きょ、いや、煉獄さんとの、ですか？』

思わず日輪刀を触る。

Aが緊張したり焦ったりした時に、必ずする仕草だった。

「「「「はい!!!!」」」」

女性隊士達の目は真剣だ。

その様子に余計焦るA。

『な、何故でしょうか、』

また半歩退く。

そしてまた詰め寄られ、ついに背中に木が当たった。

「私達、その、」

「「「「経験がないのです、!!」」」」

急に泣き始めた彼女たちにどうしていいか分からないA。

『え、えっと、？経験、？』

聞くところによると、彼女達は鬼殺隊に入り、鍛錬や任務で殿方と恋仲になる機会もなく、このまま恋を知らないまま死んでいくのではないか、と危惧して落ち込んでいたという。

そして切羽詰まった結果、

鬼殺隊きっての憧れ夫婦である煉獄とAに目をつけ、柱に畏怖を感じながらも、勇気を出して今に至る、とのことだった。

『な、なるほど、』

腕を組み考えるA。

しかし眉を下げ苦笑いすると、

『私はそういった事にはあまりいい思い出がないので、その、参考にならないのでは、と思います。』

その言葉を聴いて、女性隊士達は黙った。

月柱がかつて実兄を愛し、鬼になった兄を目の前で失った事は、半ば鬼殺隊きってのタブーであり、そして、

女性たちの間では、それは、美しい物語になっていた。

「いえ、月柱様は素敵です！炎柱様とどのように恋仲になったのですか？」

直接的に聞かれ、さらに苦笑いしたAは、少し赤くなりながら、

『き、杏寿郎さんに対して抱くこの感情は、恋とはちょっと違うので、。』

風が月柱の髪を揺らし、それを息を呑むように見つめる女性隊士達。

「恋ではない？では、何なのですか？」

女性隊士たちは、月柱を固唾をのんで見守った。