稽古のちの事2 ページ3
思い出されるいつぞやの夜の、
杏寿郎さんの台詞。
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『痛っ、。何をするのですか、』
戯れるように私の首筋に顔を埋めていた杏寿郎さんに、急に甘噛された。
私はお館様への報告書を書いており、
『筆が乱れますのでおやめください、』
と、作業を続けながら彼に伝えた。
すると、
「君は、隊士をよく介抱しているが、」
なんの脈絡もなく杏寿郎さんが呟いたかと思うと、
「君が男に触るなど、気が触れそうだ。任務ならば仕方がないと気を納めてはいるが、この気持ちのやり場が見つからん。」
と、私の肩にフワフワした髪の毛が乗っかった。
杏寿郎さんは、遊郭の時のすれ違い以来、たまにだけれど、何とも単刀直入に心中を話してくれるようになった。
その台詞を聞きながら、なんとも言えない幸福感が胸に広がるのを感じた。
『私は貴方といられるだけでもう充分ですが、貴方は更に、私をとても愛してくださる。もう、幸せが抱えきれませんね？あははっ、』
あくまで報告書を書く筆を進めながら、Aは笑って煉獄に告げた。
「A。」
(杏寿郎さんがここまで私の仕事に横やりを入れてくるなんて、とても珍しい。)
と思い、煉獄の声に今度こそ筆を置くと、
『はい、なんで、んっ、』
振り返りざまに接吻を1つ落とされた。
(えーっと、浴衣の帯も外されてる、)
口吸いをされながら、着物がズルズルと下げられているのがよく分かった。
『、杏寿郎さ、ん、心配いりませんよ？』
という言葉と同時に、肩をたたみに押し付けられ、自分の骨が軽く軋む音がした。
杏寿郎さんは、確かに嫉妬深い。悋気を起こしても、彼は怒鳴ったりはしないけれど、なんかこう、絶妙に私を解放してくれない。
そしてその引き金が、私にはいつも謎だった。
「俺は君が心配だ。今度も、」
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−ハッ!!
「Aさん？どうしたんですか？ずっと真顔で固まったままでしたよ？」
炭治郎さんの、"煉獄さんはAさんが男に触れる事を良しとしていない"という言葉が過去を呼び起こし、ついあの夜の事を思い出してしまった。
と、同時に自分の任務も思い出した。
『お二人共、私は今日から少し特殊な任務につきます故、申し訳ないのですが、先に行きますね。』
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作者名：anna | 作成日時：2021年11月19日 11時
