黄昏時に見るものとは ページ16
−キーン
その時、善逸が音を感じ、振り返った先には、
一本の大木があった。
「あ、あの、」
善逸が話そうとすると、
柱たちは全員、既にAの居場所が分かっているようだった。
「煉獄さ、」
炭治郎が、煉獄を促した瞬間、なぜか木に向かって走り出す冨岡。と、それをただ呆然と見つめるしかできないその他。
軽くジャンプをし、枝に飛び乗った冨岡は、
蹲り眠っていたAに声をかける。
「起きろ。お前は、大丈夫だ。」
-A、お前は大丈夫だよ。
『師、範、？』
ゆっくりと目を開けたAと、ただそれを見つめるだけの冨岡。
「お前の師は、お前に何を望む。」
(師範が、私に望むもの、、？)
起きたばかりのAは、ボーッと冨岡の問いを考えていた。
-私の人生の最後に、私が生きた証を残させてくれてありがとう。A、ただ幸せに、生きなさい。
Aの目に、涙の膜が張った。
『私が、幸せに、生きること、。』
Aの答えを聞くと、冨岡は、
「行くぞ。」
と先に木から飛び降りた。
下を見ると、
私の今の居場所。
(行かなきゃ。)
でも、。
「A。弟子ならば、師範の意は汲むべきだ。」
冨岡さんの呟きで、ハッとした。
幸せを手放そうとする自分の癖を、そろそろ克服しなくてはならない。
Aが申し訳なさそうに木から静かに飛び降りると、
−バサッ
降りた瞬間、包まれたのは、
『杏寿郎さん、』
最愛の、人だった。
『キ、ライなんて言ってごめんなさい。』
抱きしめられながら呟くと、自分でもびっくりするほど声が小さかった。
それでも、
「うむ！謝らなくてはいけないのは俺の方だ！いらぬ心配をさせてしまい、すまなかった！怖がらせたな。」
この人はきちんと受け止めてくれる。
煉獄はAを抱きしめたまま冨岡に振り返ると、
「冨岡、礼を言うぞ！」
と笑顔を向けた。
それに対し、
「何の事だ。俺は行く。」
と、一人スタスタ歩いていってしまった。
Aは心の中で、冨岡の強さに何度も感謝した。
不幸病の私の手を引っ張るのは、いつだって冨岡さんだったから。
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「不幸に頼りすぎるな。」
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作者名：anna | 作成日時：2021年11月19日 11時
