月柱と、炎柱 ページ13
「月柱様、お待ちください!!」
蝶屋敷を、走る。
後ろでアオイさんが私を呼ぶ声がするけれど、
それどころじゃないよ、
杏寿郎さん、杏寿郎さん、
『杏寿郎さんっ、!!』
治療中なのか、まだ扉は開かない。
『開けて、ねぇ、開けてよ、杏寿郎さん、!!』
「A、落ち着いて。」
カナヲが中から出てきた。
『カナヲさん、杏寿郎さんが、意識不明だって、、』
取り乱すAをよそに、カナヲは冷静だ。
「うん、そう。」
っ、
『やだ、会わせて!!』
部屋に入ろうとした、その時、
「うまいっ!!!!」
!!?!
、今、？
『う、まい、？』
中から胡蝶さんの声と、後ろからアオイさんの息切れの呼吸音が聞こえる。
「煉獄さん、Aさんがいらっしゃらなくてもきちんとお食事は摂ってくださいね？まさか空腹で倒れるなんて、Aさんが聞いたらどう思われるか、、って、すでに聞かれておりましたね。」
苦笑いする胡蝶さんと、何やら丼ものを食べている杏寿郎さん。
Aの目からポタポタと涙がこぼれ、煉獄の目が見開かれる。
「A、すまな、」
『、杏寿郎さんなんて、キライ。』
泣きながら、蝶屋敷を出た。
師範なんかが夢に出てくるから。
冨岡さんが珍しくお見舞いになんて来てくださるから。
Aはズルズルとその場にへたり込んだ。
悪いことばかりじゃない。
それを信じきれない私はまだ、弱い。
でも今回は、
『っふ、うっ、ひっ、、こわかっ、た、』
冬の早朝、入院着に月柱の羽織という出で立ちで、Aは泣き崩れていた。
安心した。
(八つ当たりして嫌いなんて言っちゃったけど。)
でも、謝りたくない。
『なに、空腹で倒れるって、』
口には出さないけど、おかしいよ。
杏寿郎さん、らしいよ。
本当に、
『よかったぁ、』
『私って、弱いなぁ、』
顔を手で覆い、しばらく動けなかった。
-------
「よも、」
その頃の煉獄は、目を見開いたまま、身動き一つしていなかった。
"キライ"
最愛の人からの最悪の言葉が頭で反芻。
ため息をつく胡蝶。
「煉獄さん、生涯を共にするというのは、無駄な心配をかけないようにする努力なのではないでしょうか？」
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作者名：anna | 作成日時：2021年11月19日 11時
