どういうわけか、煉獄さん。3【煉獄杏寿郎】 (ページ11)

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月柱の一面3 ページ11

「昔はよく、泣いていたな。」

Aは苦笑いする。

冨岡さんは、私の師を直接知る訳ではなかったが、
よく任務を抜け出して師範の墓石に手を合わせに行っていたことがバレていた。何故か。

「お前の師が亡くなった直後だったと、聞いた。」

そうだった。確か冨岡さんと出会ったのは、師範が亡くなってすぐ後だった。

静かな佇まいと、自分を追い詰める姿勢に、冨岡さんと私は自責仲間だと密かに思っていた。

「どんな方だ。」

(師範のこと、かな。)

『うーん、お恥ずかしながらよく分かりません。ですが共にいた2ヶ月が、私の一生を左右したのは言うまでもないです。鬼殺隊に入り、1年目にとある山村で出会った時には、すでに結核でしたので、打ち合いの稽古もできませんでしたが、。今思えばあの村は、結核の方が隔離されていた場所だったのかもしれません。』

「そうか。」

あの村は、鬼も寄り付かなそうな雰囲気があった。不思議と胸が騒いで、素通りができずに立ち寄った。

そこで出会った師範。

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「君は、呼吸の種類が定まっていないね？」

月明かりの下、柔和な声に、身動き一つできなかった。

『なぜ、』

それが分かるのですか。

「年の功かな、ははっ。」

その人はただ静かに笑い、私に2冊の本を差し出した。会ったばかりなのに。

「私も人間だからね、いずれ死ぬ。この本は私が書いたものなんだけれど、自分で言うのもなんだが、結構よく書けたんだよ！でもこの村じゃ誰も読んでくれる人がいないだろう？だから君に、贈り物だ。」

はじめは変な人だなって。

『自画自賛ですか、』

私が呆れて言えば、

「うん、いいだろう？」

と笑ったあの人。

帰ってから何となく本を読み進めてみたら、もう止まらなくなっていた。それは、

"月の指南書"

だった。

次に会ったとき、私は頭を下げた。正式に弟子入りしたいと。

「あはは、そんなによく書けてたかなぁ？嬉しいなぁ。うん、私はもうすぐ死ぬのだけれど、それまででいいのなら、ぜひ頼むよ。」

こうして成立した師弟関係。

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「煉獄は知っているのか。」

Aは天井に視線を映した。

『話したら、杏寿郎さんまでどこかに行ってしまいそうで、まだ話せていないです。』

「そうか。」

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