秋雨と恋雨5 ページ5
縁側から雨が降るのを見ていた。
蝶屋敷に落ち葉がハラハラと舞い、
雨の雫と共に地面を飾っていく。
ふと思う。
"何の為に生きているんだろう。"
これは、兄上を死なせてしまった後悔とか、両親と生き別れた懺悔とか、不甲斐ない自分とか、怪我の痛みとか、秋の風が叙情的にさせるからとか、
色んな感情が入り乱れる時なんだけど。
すべてを総称して、
『もう、いやだな。』
一人、呟いた。
------
あの日、君に早く会いたい一心で、任務が終わるより前に遊郭を訪れたが、それが不幸中の幸いだった。
Aは女中であるにも関わらず人を惹きつけ、俺はそれに悋気せぬよう足早に君を部屋に連れ立った。
部屋に入り向き合うと、
俺は思わず
「A、君は随分と人気があるようだな！」
などと言ってしまったが、君は
『やめてください。ただの女中に、ここまで熱を上げてくださるのは煉獄さんだけですよ。』
と、眉を下げて笑うだけだった。
(いつも、通り？)
先程から気になる、額の汗。
Aの、時より引きつるような笑い方。
頻繁に肩元を触る仕草。
悪い予感がした。
『？、煉獄さん？っ、』
上目遣いで首を傾げてくる君の肩に手をかけ、
着物を下にずらすと、
「こ、れは、」
自分で処置したであろう体中に巻き付けたさらしには血が滲み、あまりにも痛々しい様子が現れた。
「どうしたんだ!!」
誰にやられたのだ。いつ。どこで。
すると君は俺から視線を外し、
『いや、遊郭からは出られないですし、まだ仕事が残っていたのでそのまま、』
"そのまま"、？
この状態のまま、過ごした、というのか。
誰にも告げず。
一歩間違えば出血過多で死んでしまう可能性もあるというのに、か。
俺は、頭に血が上るのを感じた。
「そんな事を聞いているのではない!!先日君と会った時傷は完治に等しかった!!それがなぜ故このような、、いや、話はいい。行くぞ。」
話している最中に、冷静になった。
(早い処置が必要だ。)
痛々しいが、美しい着物はとても似合っていた。
だが、そのような事はもう口には出せまい。
『えっ、やっ、私まだ、』
まだ任務に就こうとする君に、また苛立ちが湧き上がったが、
「行くぞ。」
一言だけで収めた。
腕の中にいる君は、俺に静かにしがみつくだけだった。
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Anna(プロフ) - REI様、コメントありがとうございます。自分としても、そこを気をつけたいと思っておりましたので、そう言っていただけてとても嬉しかったです。これからもぜひ物語を見守ってくださったら有り難いです！ (2021年11月19日 8時) (
レス) id: 6165e310c0 (このIDを非表示/違反報告)
REI(プロフ) - 言葉の使い方、文章がとても綺麗でどタイプです(*'ω'*)応援してますっ！ (2021年11月19日 4時) (レス) id: a2d58e6a6b (このIDを非表示/違反報告)
Anna(プロフ) - 柚葉様、はじめまして！コメントありがとうございます！同類ですね笑 更新楽しみにして下さっていて嬉しいです！しばしお待ちをー！ (2021年11月16日 18時) (レス) id: 6165e310c0 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 初めまして。生きていてほしかった人でございます。一気に読ませていただいております。更新楽しみです(^.^) (2021年11月16日 15時) (レス) @page39 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
Anna(プロフ) - milk様 素敵なコメントありがとうございます!嬉しいです!ワクワク展開にしていけるように精進いたします！ (2021年11月11日 10時) (レス) id: 6165e310c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：anna | 作成日時：2021年11月7日 17時
