越える3(番外編) ページ23
『槇寿郎さん、貴方にも、聞こえているのでしょうか。』
Aは尚も破片を拾い集めながら続ける。
それを見た千寿郎が、
「Aさん!おやめください!手を怪我します!」
後ろから叫ぶ。
Aは手を止めると、
『まだ煉獄家は、バラバラではありません。元に、戻せます。』
千寿郎に柔らかく微笑んだ。
『私の家族はもうきっと、無理でしょう。だから、私の人生には、本当は、"家族"なんていう存在はあり得なかったのです。それを、私に教えてくれた杏寿郎さん。そのような温かい方を、私の人生に、巻き込んだ事、最初は深く、悔いておりました。』
「ならば、杏寿郎と別れろ!!!!」
着物が濡れて、貼り付いている。皮膚が冷たい。でも心は温かい。
『もしも、別れが来るときは、』
Aの瞳は深くに透き通り、まるで月夜のようだった。
『死に別れとうございます。』
決意と覚悟の空気を、Aは纏っていた。
『私は絶対に、杏寿郎さんを置いていきません。本来ここは私のような者がいていい場所ではなかった。それでも私は、杏寿郎さんとの未来を、深く求めて止まないのです。もう、失いたくないのです。』
槇寿郎は眉を寄せ、額に汗をかいていた。
『私は、槇寿郎さん、貴方に会えた事にも、感謝致します。今日は、ありがとうございました。流石にお見苦しい格好故、出直します。』
最後にAは柔らかく槇寿郎に向けて微笑むと、煉獄と千寿郎の横を、何も言わずに通り抜けた。
「っ、A!!」
煉獄が思わず呼び止めると、
『すみません、血が目に入って痛いので、ちょっと止血してきますっ、ははっ』
と苦笑いして、門を出て行った。
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Aが出て行ったあとの煉獄家では、
「父上。いくら父上でも、やっていい事と悪い事がおありなのは、分かりますか。」
杏寿郎が、未だかつてない程の殺気を纏い、槇寿郎に凄んでいた。
「Aが戻ったら、謝っていただけますね。彼女は、Aは、俺の、とても大切な人なのですよ、父上、。」
杏寿郎の珍しい姿に槇寿郎は眉を下げ、布団に潜り込んだ。
「出ていけ!!あの女にも敷居をまたがせるな!!」
その背中を、煉獄は見つめていた。
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Anna(プロフ) - REI様、コメントありがとうございます。自分としても、そこを気をつけたいと思っておりましたので、そう言っていただけてとても嬉しかったです。これからもぜひ物語を見守ってくださったら有り難いです! (2021年11月19日 8時) (レス) id: 6165e310c0 (このIDを非表示/違反報告)
REI(プロフ) - 言葉の使い方、文章がとても綺麗でどタイプです(*'ω'*)応援してますっ! (2021年11月19日 4時) (レス) id: a2d58e6a6b (このIDを非表示/違反報告)
Anna(プロフ) - 柚葉様、はじめまして!コメントありがとうございます!同類ですね笑 更新楽しみにして下さっていて嬉しいです!しばしお待ちをー! (2021年11月16日 18時) (レス) id: 6165e310c0 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 初めまして。生きていてほしかった人でございます。一気に読ませていただいております。更新楽しみです(^.^) (2021年11月16日 15時) (レス) @page39 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
Anna(プロフ) - milk様 素敵なコメントありがとうございます!嬉しいです!ワクワク展開にしていけるように精進いたします! (2021年11月11日 10時) (レス) id: 6165e310c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:anna | 作成日時:2021年11月7日 17時