越える。(番外編) ページ21
門前には、
千寿郎さんがいてくださっていた。
「兄上、Aさん、お入りください、」
私のお見舞いにも来てくださった千寿郎さん。
以前、千寿郎さんが私のお見舞い用の花を生けてくださっている最中に、蝶屋敷で隊士たちが急に喧嘩をはじめた事があった。
その時、千寿郎さんは持っていた花瓶を落とし、
涙をこらえながら震えていた。
大きな音にびっくりするそのお姿に、お父様に怒鳴られていることはすぐに分かった。
「ご、ごめんなさい、Aさん、」
謝る千寿郎さんをなだめてから、
『ちょっと待っていてくださいね?』
ニコリと笑ったAが病室を出て、次に帰ってきた時には、喧嘩は静かになっていた。
「?Aさん、何かなさいましたか?」
(千寿郎さんを泣かせた天罰をちょっと、ね。)
『いえ、注意をしてきただけですよ。』
微笑むAに、安堵したように笑う千寿郎。
「さすが柱ですね。」
千寿郎に褒められて、Aはホワホワした。
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蝶屋敷の庭先で喧嘩を始めた隊士たちは、
『ねぇ、』
Aが刀を抜いたと同時にできた穴に、まとめて落とされていた。
穴を覗き込むAは、ニコリと笑うと、
『お静かに。』
と告げ、千寿郎の元に戻ったのだった。
残された隊士達は、
「え、今月柱様刀抜いた?」
「これどんな状況?」
「でもよぉ、月柱様、美しい、。」
「はぁ、可愛すぎだろ、。」
喧嘩をすっかり忘れていたそうな。
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なので、今、千寿郎さんが私を気遣ってくださっている様子が、ひしひしと伝わってきた。
「こちらです、」
父、槇寿郎さんの部屋の前まで来ると、何となく、杏寿郎さんの空気も変わったように思えた。
『ありがとう、千寿郎くん。では、ご挨拶に。』
私と杏寿郎さんは襖の前で手をつくと、一礼した。
「父上!杏寿郎です。今日は以前より話していた方をお連れ致しました!」
すると、部屋の中から、
「弱いくせに恋情などにうつつを抜かすとは、お前は何を考えとるのだ!くだらん!!とっとと帰れ!!」
と怒声が響き渡った。
廊下の隅にいた千寿郎さんの肩がビクッと跳ねたのが分かった。
「父上に、二人で挨拶をしたく思っております。」
この怒りを、いつもお一人で受け止めて、。
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Anna(プロフ) - REI様、コメントありがとうございます。自分としても、そこを気をつけたいと思っておりましたので、そう言っていただけてとても嬉しかったです。これからもぜひ物語を見守ってくださったら有り難いです! (2021年11月19日 8時) (レス) id: 6165e310c0 (このIDを非表示/違反報告)
REI(プロフ) - 言葉の使い方、文章がとても綺麗でどタイプです(*'ω'*)応援してますっ! (2021年11月19日 4時) (レス) id: a2d58e6a6b (このIDを非表示/違反報告)
Anna(プロフ) - 柚葉様、はじめまして!コメントありがとうございます!同類ですね笑 更新楽しみにして下さっていて嬉しいです!しばしお待ちをー! (2021年11月16日 18時) (レス) id: 6165e310c0 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 初めまして。生きていてほしかった人でございます。一気に読ませていただいております。更新楽しみです(^.^) (2021年11月16日 15時) (レス) @page39 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
Anna(プロフ) - milk様 素敵なコメントありがとうございます!嬉しいです!ワクワク展開にしていけるように精進いたします! (2021年11月11日 10時) (レス) id: 6165e310c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:anna | 作成日時:2021年11月7日 17時