逃避する頭2 ページ10
「お館様におかれましても―――――」
不死川さんの声がする。
(何で私は今更、兄上の事を思い出しているんだろう。考えたって、意味なんかないのに。)
跪きながら、風を感じ、目を閉じた。
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ああ、煉獄さんだ。
こないだ"猫"だと言われ、私は目が覚めた。
逆を言えば、あの日から私はまた、過去にとらわれるようになった。
病棟から逃げた時、私は自由になったと思っていた。鬼殺隊に入る事になって、自分の身を立てられたことが嬉しかった。
だから、忘れていたんだ。
私には、兄上を失った過去があり、その兄は最愛の人であった事を。
そしてその兄上の面影を、あろうことかずっと煉獄さんに重ねていた事を。
煉獄さんといると不思議な気分になった。
温かく受け入れてくれるけれど、己には入らせない不可侵領域をしっかりと感じる。
それは、愛し合ってはいたけれど、決して結ばれてはいけない兄上との関係に似ていたと、今になってみれば思う。
だからあの日、煉獄さんに抱きしめられた時、兄上の温もりを無意識に追い求めていたんだ。
「A、」
急に産屋敷邸が静まり返った。
(((A)))!!
小声で、宇髄さんと不死川さんと時透くんが私を呼び、お館様が私を呼んでいることを理解した。
『も、申し訳ございません!!』
下を向く。
意識を完全に兄に傾けすぎた。
お館様がクスッと笑う声が聞こえた。
「いいんだよ、A。それで、君はだいぶ変わったね。」
と告げられた。
、変わった?
何も言えない私を前に、
「A、過去に戻らなくても、君はいい子だよ。だから、早く思い出せるといいね。」
と仰られた。
『お館様?私は、何を思い出すべきなのでしょうか。』
もはや自分でも、無意識に問うていた。
他の柱たちは、目の焦点があっていないようなAと、お館様のやりとりを、ただ跪きながら聴いていた。
とりわけ煉獄は、先日、蕎麦を食べてから久々に見る今日の彼女の佇まいの変化に、いち早く気づいていた。彼女が、愛想笑いしかしていないのだ。
お館様の話は続く。
「元の君を、だよ。こないだ迄の君は、無垢だっただろう。君の大切な人は、君を縛らないと、私は思うよ。」
"大切な人"。それはすなわち、兄上の事指しているに違いなかった。
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Anna(プロフ) - milk様!おまたせして申し訳ないです、。やっと編集できました!ありがとうございます!続編もなかなかの亀更新ですが、何かあればまたコメントお待ちしております! (2022年1月17日 1時) (レス) id: 6165e310c0 (このIDを非表示/違反報告)
milk - こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません。。。 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 日常的に変化することのここの部分 ○○←名前が笑顔になると、不死川は怪訝そうにそっぼを向いた。 これ正しくはそっぽを向いた。ではないんでしょうか? (2021年11月9日 0時) (レス) @page36 id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
Anna(プロフ) - コメントありがとうございます!細やかに読んでいただけて嬉しい限りです!ここは、作者目線の客観的な文章にしたくて呼び捨てにしております!違和感ありますか??他は、夢主様と煉獄さんの主観目線です。基本呼び捨ての場面は客観的だと捉えてもらえたら嬉しいです! (2021年11月7日 8時) (レス) id: 6165e310c0 (このIDを非表示/違反報告)
milk - 続けてのコメントですみません(>_<) これさんが抜けてませんか? その前まではずっとさん付けでしたのに…。 (2021年11月7日 8時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
milk - おはようございます(*^^*) はじめまして。 いきなりすみません。。。 物語読んでいて気が付いたのですが...。 胸に炎をのここの部分 ○○←は無意識に、煉獄にギュッと抱きついた。温もりを求めるように。 (2021年11月7日 8時) (レス) @page21 id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:anna | 作成日時:2021年10月26日 20時