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05.最後の幸せ ページ5
〆．
「これ、あげる」
「これは……」
「髪飾り。私が昔に貰ったものだけれど………私にはもう、似合わないから」
大好きな彼からのプレゼント。
彼と釣り合わない私にとっては、もう思い出だけで十分だった。
「それと、御守り」
彼からの手紙も握らせた。
ほんの少しの可能性に賭けただけだけど。
「メモ、ですか？」
「大事なもの。大切に持っていて」
『Aちゃん
だいすきです！
けっこんしよな！』
そこだけ切り離して、渡した。
名前が同じで良かった。
もし彼女が上手く彼と出会えれば、少しは恩恵を受けられるかもしれない。
「逃げなさい」
「え？」
「はやく。母が、あなたを殺そうとしている」
「……………！！」
「お願い。それを持って、お城へ行くの。門番に何度追い返されても、絶対に王子に伝えて。
あの日の少女です、これを覚えていたら助けてください…………って」
髪飾りをAの髪につける。
うん、やっぱりあなたの方が似合う。
「あの日の少女って……」
「大事なものだけを持って、はやく！」
私が怒鳴ると、Aは自室へ駆け込み、
僅かな荷物だけ持って家を飛び出した。
『大毅より！』…………
その小さな端切れだけが、
私の最後の幸せなんだと思った。
〆．
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作者名：はゆな
| 作成日時：2019年8月24日 19時
