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『そして、残る最後の一校……推薦招待校として、世宇子中学の参戦が承認されております！』
世宇子中。耳馴染みのない学校名に、観客も困惑からざわめいている。
｢はて、小生のデータにはそのような学校の登録はありませんが……｣
｢
｢たしか、ギリシア神話でしたっけ？｣
春奈の確認にAが頷いた。ゼウスは、雷を操って戦うオリンポスの最高神だ(雷といえば、雷門のトレードマークとも共通する)。全知全能とも謂われており、中学の名前に採用するには些かオーバーな気もする。
世宇子中のイレブンは開会式にやって来ることなく、プラカードを持つ女性が一人並び立った。ざわりと背筋を走った悪寒に、思わず身を震わす。帝国学園が電車の窓から見えてきたときの感覚にも似たそれは、どうしようもなくAを不安にさせた。
｢……｣
もし、地区予選決勝のときみたいに仲間たちが危険な目に遭ってしまったら……。そんなことを考えるだけで、身も毛もよだつ。ただ、一刻も早く豪炎寺のそばに行きたいと思った。
◇
バスで雷門中に帰るために合流した途端豪炎寺の背中にくっついて離れなくなってしまったAを、雷門イレブンは不思議そうに眺めている。
｢天使様、いつも以上に豪炎寺にべったりじゃん？｣
｢いや、思い返してみると割といつもこんな感じな気が……｣
存分にからかいを含んだ声色で話す土門と、わりと真剣に考え込んでいる風丸。バスが出発しても、Aは変わらず豪炎寺にへばりついたままだ。
｢A、どうした。眠いのか、それともお腹が空いたのか？｣
｢…………ねむい｣
｢……じゃあ、少し寝ていろ。着いたら起こしてやる｣
｢うん｣
なんだ眠かったのか、と仲間たちは納得しているが、豪炎寺は自分の肩に顔を埋めるAの様子がおかしいことに気付いていた。いつもなら眠れる状況になるとすぐ寝始めるのに、寝息が聴こえてくる様子はない。何かあったのだろうか。
やさしく背中を撫でると、Aの身体の強ばりがほんの少し解けた気がした。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年9月24日 12時
