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お手本の"炎の風見鶏"を、円堂が"ゴッドハンド"で迎え撃つも弾き損ねた。この必殺技は、完成すればこんなにも威力を発揮するのか。そこに、先程までいつの間にかペナルティエリアに近づいていた影野が声を張り上げる。
｢この技の鍵は、二人の距離だよ！｣
｢距離……？｣
Aは首を傾げた。試合の流れとチームの状況からその時可能な最大限の戦力を投下して選手の力を引き出すのが得意な彼女だが、他人の必殺技に関してはからっきしだ。
｢二人がボールを中心に同じ距離、同じスピードで合わせないと駄目なんだ｣
｢なるほど！｣
｢そういうことか｣
風丸と豪炎寺は影野の言葉で理解出来たようである。よく気づいたと褒める円堂に、影野は微かに微笑んでみせた。
ホイッスルが鳴り、試合が再開する。
｢風丸、豪炎寺！ 行け！｣
｢おう！｣
円堂の声に二人が答えた。ボールはマックスがキープし、菅野を躱して豪炎寺へ。彼は風丸と頷き合い、ボールを高く上げる。そして、落ちてきたそれを二人同時に蹴り上げた。距離もタイミングも完璧だ。
｢"炎の風見鶏"！｣
｢やった……！｣
ついに完成したイナズマイレブン直伝の新必殺技が、ゴールに突き刺さる。
｢うんうん、文句無しにかっこいいね｣
ご満悦な様子のAに、シュートを決めた豪炎寺が振り向いて笑った。
◇
試合が終了すると、選手たちがキャプテン円堂の元に集まる。マネージャー陣もまた彼らのいるフィールドに歩み寄った。ふと河川敷の階段の上を見ると、イナズマイレブンのおじさんたちが微笑ましげに後輩の姿を見守っている。
｢さあ、次はいよいよ全国大会だぞ！｣
｢｢おう！！｣｣
円堂の声に皆が雄叫びで答えた。全国大会では、一体どのようなサッカーをする選手に出会えるのだろう。一筋縄ではいかないとAの'勘'は言っているが、それでも雷門イレブンなら……自慢の仲間たちなら、きっと勝ち進んでいけるはずだ。
｢なんだかうずうずする〜シュート撃ちたい｣
｢とりあえず明日まで我慢しろ｣
｢あい｣
感情が高ぶるあまり暴走しないよう、Aの手をがっちり握る豪炎寺。通常運転のバカップルに、周囲の空気が生暖かくなった。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年9月24日 12時
