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ゴールに放たれたシュートを円堂が身体の回転を駆使して受け止める。
｢ナイスセーブ、円堂！｣
｢ありがとうA！｣
ニコニコと笑い合っていると、先程陸上部の後輩に連れて行かれた風丸と彼の様子を見に行った栗松が戻ってきた。
｢風丸、遅いぞ！｣
｢遅れてすまん！｣
声をかける円堂に、風丸が答える。栗松の表情が浮かないのが気になるが、何かあったのだろうか。
｢始めようか｣
｢じゃあ頼むぞ！｣
風丸は必殺技の相方である豪炎寺の元へ駆け寄り、円堂はゴール前に戻った。豪炎寺はじっと風丸を見つめ、静かに聞く。
｢あの一年に何を言われた？｣
｢大したことじゃないさ｣
豪炎寺と目線を合わせないまま答える風丸に、Aは若干の違和感を覚えた。
｢……珍しい、いつもはちゃんと目を見て話すのに｣
｢どうかしました？｣
｢なんでもないよ、春奈｣
まだ、違和感だけ。取り敢えずは静観して彼等の練習を見守ろう。
◇
｢風丸、豪炎寺。"炎の風見鶏"だ！｣
｢はい！！｣
響木の掛け声に二人が返事したのを合図に、半田がセンターサークルから高くボールを上げる。風丸が上から、豪炎寺が下からボールを蹴るものの、先程成功したときより精度が落ちている……というより、息が合っていない。二人が蹴ったシュートはゴールから大きく外れ、炎も掻き消えた。
その後何度も"炎の風見鶏"を撃ち続けたが、やはり成功しない。影野のお陰でポイントは掴めているし、練習を中断するまでは一度も失敗していなかったから技術の問題ではないだろう。となれば、やはり精神面か。
息を切らす風丸に豪炎寺が声をかける。
｢意外と分かりやすい奴なんだな｣
｢何が｣
｢陸上部に戻ってきてくれとでも言われたんじゃないのか｣
豪炎寺の言葉に、風丸は自嘲気味に笑みを零した。彼は優しさ故に後輩に好かれやすいが(栗松然り陸上部の宮坂然り)、だからこそ悩むことも多いだろう。
結局その日、"炎の風見鶏"が成功することはなかった。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年9月24日 12時
