【inzm】雷門の天使様２ (ページ8)

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　考えても考えても分からない。春奈曰く尾刈斗中の｢呪い｣とのことだが、呪いではないのは断言できる。人体の時を止めるような呪いは、人間ご(・)と(・)き(・)に扱えるものではないのだから。

｢A、考え事をしながら歩くと危ない｣
｢あ、ごめんごめん｣

　今日も練習が終わり、夕香がいる病院にも寄って、Aは豪炎寺と繋いだ手を揺らしながら家路についていた。彼がサッカー部に入ったから、これからは毎日一緒に帰ることができる。抑えようとするが、頬が緩むのを止められない。

｢考え事をしたり、機嫌が良くなったり忙しいな｣
｢えへへ。修也と一緒に居られるのがうれしくって！｣
｢そうか、俺も嬉しい｣
｢あれ、珍しく素直｣

　少しだけ驚いて、穏やかに微笑む横顔をじっと見つめると、ちょんと小さく頬を突かれる。この幼なじみは、Aの左頬にできる笑窪がお気に入りらしいので、狙いは恐らくそれだ。

｢俺は自分で思うより、もっとサッカーが好きなのかもしれない｣
｢今更？｣
｢ボールを蹴っていると、どうしてこの一年間サッカーをせずに過ごせたのか分からなくなる｣
｢修也も大概サッカーバカだよね〜｣
｢お前に言われたくはないな｣

　いつものように頬を引っ張られると思ったら、何故か向かい合って両手で頬を包まれた。

｢お前も同じだ、サッカーと｣
｢？わたしはサッカーじゃないけど｣
｢そういうことじゃない｣

　言いたいことが伝わっていないのに思わず苦笑する。
　Aが家に来てから数日間を共に過ごして気づいたこと。自分で思うよりもずっと彼女の存在が大切で、彼女を失えばきっと自分は息も出来なくなるだろう、と簡単に予想がつくほどに好きなのだ。この先もこれまで通り、出来ることなら永遠に、彼女には自分のそばにいてもらわないと困る。
　そう思ってはいても上手く言葉にできない豪炎寺は、普段より少し素直になっても、口下手で不器用なままだった。

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