【inzm】雷門の天使様２ (ページ45)

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　グラウンドに向かうと、野生中の生徒たちが多く観戦に来ていた。やはり、どことなく野生児のような雰囲気が漂っている。校風だろうか。

｢観客がいっぱいだ……！本当にフットボールフロンティアが始まるんだな、燃えてきた！応援に来てくれた人のためにも、頑張ろうぜ！｣
｢って、全部野生中の応援だろ？｣
｢ずるっ｣
｢俺たち弱小サッカー部の応援なんかいるわけ……｣
｢いるんだよ、ほら！｣

　いつも通り皆を鼓舞しようとした円堂に風丸と染岡が突っ込むものの、雷門イレブンは決してアウェーではなかった。円堂が指し示した方向には、友人同士らしい小学生三人の姿が。

｢サク！？｣
｢兄ちゃーん！応援に来たよー！｣

　真ん中でメガホンを構えているのは、壁山の弟らしい。このような山奥まで兄の応援のために遥々やってくるとは、可愛い弟である。しかし、壁山はただでさえ高所恐怖症により"イナズマ落とし"が完成していない中で、弟が応援に来たというプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。トイレに行こうとする壁山を数人がかりで止める。
　茶番のようなやり取りをする雷門イレブン(当人たちは必死だ)をベンチに座ったまま珍しく静かに眺めるAの前に、豪炎寺が跪いた。極限まで彼女の体調を気遣う姿勢に、周囲には生暖かい空気が流れる。

｢A、もう平気か？｣
｢あ、大丈夫だよ。心配かけてごめんね、試合前なのに｣
｢気にするな｣

　心配そうな表情を浮かべる豪炎寺にAが答えた。顔色が多少良くないのが気になったが、虫が飛び交う中半袖でいるのは嫌だと冷静に豪炎寺のジャージを羽織る余裕は出てきた様子なので、恐らくは大丈夫だろうと見当づける。

｢試合頑張ってね｣
｢ああ。A、見ていてくれ｣
｢うん｣

　額を寄せ合い笑う二人。これで恋人でもなんでもないというのだから謎である。お互いが好きで好きでたまらないと、蚊帳の外の人間でも一瞬で分かるほどだというのに。

｢豪炎寺、天宮の王子様みたいだなぁ｣
｢あの二人のイチャイチャをいつものことって思い始めてる自分がいる｣
｢これがほんとの刷り込みってか｣

　色とりどりの花が咲き乱れていそうな二人の世界の傍観者たちの心が一致した。

　慣れって怖い。

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