【inzm】雷門の天使様２ (ページ44)

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　次の日。雷門イレブンは試合のために野生中にやって来た。その名の通り、まさに大自然の中にある中学校である。

｢ここが……野生中？こんなジャングルの中にあったんだ｣

　円堂たちが物珍しい景色に辺りを見回している中、そんな余裕のない人物が一人。

｢……｣
｢天宮、そんなにぴったり豪炎寺にくっついて暑くないのかー？｣
｢今暑さよりも大変な事態に直面してる｣

　半田の声に、Aは珍しく愛想の欠けらも無い淡々とした声で答えた。木々の間を飛び交う蝉や、縦横無尽に予測不能な動きをする蝶や、足元に見える飛蝗に怯え、豪炎寺を盾にしている。そう、彼女の大嫌いランキング堂々の第一位は虫である。

｢へえ、天宮って虫が苦手だったんだな｣
｢虫の生存権を否定するつもりはないけど、それはそれとして目の前に現れて欲しくない｣
｢お、おう｣

　こんな時でも、Aの考え方は中学生にしては些か突飛だ。普段は弱みを一切表に出さない彼女の苦手なもの。物珍しさから話しかけてみた染岡だが、いつになく目が死んでいるさまを見て引き下がった。触らぬ天使様に祟りなし、である。
　すると、背後から物音がして皆が振り返る。すぐさま目に入ったショッキングな光景に皆がドン引きした。

｢これが車コケ？初めて見たコケ！｣
｢タイヤが4つもついてるチー！｣

　信じられないことを言いながら、夏未が乗ってきた如何にも高級そうな車を躊躇いなく触っている、まさに野生児といった容貌の人たち。触っているというよりは、幼い子どもが玩具で遊んでいるかのように乱暴かつ自由に扱っている、というのが正しいかもしれない。

｢な、なんなの？｣
｢もうやだこんな場所……｣

　夏未は珍しく呆然とし、先程から虫に怯えるAに至っては、彼らが着ているジャングルの保護色のユニフォームで虫を連想したらしく、どんどん顔色が悪くなっていく。見かねた豪炎寺が自分のジャージを彼女の頭に被せ、視界を塞いだ。

｢あっ、あの人たちですよ！野生中のサッカー部！｣
｢……あんなのに負けられるかよ｣

　いつもの情報メモを見ながら、春奈が彼らに向けて人差し指を向ける。彼らの動きからは身体能力の高さが窺えるものの、やっていることが滅茶苦茶なので、警戒よりも呆れが先に芽生えてきた。
　この試合、いったいどうなるのか。予想もつかないことが起こりそうである。

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