【inzm】雷門の天使様２ (ページ34)

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｢……うん、相手の高さに勝つにはこれだ！ "イナズマ落とし"！｣
｢"イナズマ落とし"……！｣
｢かっこいいッス！｣

　少林と壁山が瞳を輝かせた。"イナズマ落とし"。如何にも高いところから打ち込みそうな名前の必殺技である。シュートは普通前に向かって一直線に打つものなのに、高さを加えるとはよく考えつくものだ。

｢読むぞ、いいか｣

皆が息を呑んで円堂を見つめる。

｢一人がビョーンって跳ぶ。もう一人がその上でばーんとなって、くるっとなってズバーン！これぞ"イナズマ落とし"の極意！ ……え？｣
｢なんだよそれ……｣
｢ビョーンとかバーンとか、そんなんばっかじゃないッスか……｣
｢びょーん……ずばーん……っふふ……｣

　突如とした擬音語のオンパレードに、皆がお手本のようにひっくり返った。染岡と壁山が呆れたように呟き、笑い上戸のAはというと、豪炎寺の膝に突っ伏して何とか堪えている。睡眠欲は人間の欲求の土台である。豪炎寺のにおいを嗅ぐと眠くなってくるので、笑いを堪えるにはもってこいなのだ。

｢円堂……お前のじいさん、国語の成績良かったのか？｣
｢さぁ……サッカー一筋の人だったらしいから……｣
｢あんだけ騒いでビョーンのズバーンか……もうちょっと書いてくれよ……｣
｢でもさ、じいちゃんは嘘はつかないよ。ここには、本当に"イナズマ落とし"の極意が書かれてるんだ。後は特訓さえすればいいんだよ！｣
｢どっから来るんだ？その自信｣

　風丸、染岡、円堂の会話を横目に、豪炎寺は考え込む。

｢ビョーンと跳んで……？｣
｢何か分かったの？｣
｢……ただの予想に過ぎないが｣
｢さすが修也〜｣

　自分の膝で頬杖をつくAが随分と楽しそうなので、指先でちょんと鼻を突いてみた。

｢？｣
｢……｣

　きょとんと首を傾けくりくりした銀の眸を瞬くさまが可愛らしくて、思わず頬が緩む。豪炎寺の笑顔が見られるだけで幸せだと言わんばかりに微笑むAを見ていると、堪らない気持ちになった。

｢おーいバカップル、二人の世界に入るな。練習始まるぞ〜｣

　"イナズマ落とし"の全貌は分かっていないが、兎に角身体を動かさないと始まらない。
　半田の声にバカップルではないと答え、立ち上がる。自分の中で立てた見解を円堂に伝えるべく、Aの手を引いて部室を出た。

｢あれがバカップルじゃなかったら何がバカップルなんだ｣

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