【inzm】雷門の天使様２ (ページ30)

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　次の日の昼休み、Aは夏未に会うために理事長室にやって来た。

｢失礼します｣
｢あら、天宮さんじゃない。何か御用？｣
｢サッカー部のことで、ちょっとね｣

　夏未がソファーに座るよう勧めてくれたので、お言葉に甘えることにする。ふわふわで座り心地が好い。出された紅茶も芳しい花の香りがして、自然と頬が緩むのがわかった。

｢紅茶、好きなの？｣
｢うん。……とっても素敵な香りだね。アールグレイ？｣
｢そうよ。まさか紅茶を一緒に楽しめる同級生が居たとは思わなかったわ｣
｢ふふ、たしかに中学生にはちょっと早いかもしれない｣

　花の香りに包まれた部屋の中で、穏やかに会話をする。それが、何だか特別なことのように思える。夏未にじっと見つめられていることに気づき、首を傾けると優雅な笑みを返された。

｢サッカー部に混じっているあなたを見た時は気づかなかったけれど…｣
｢ん？｣
｢大人しくソファーに座って紅茶を飲んでいる姿は、本当に天使みたいね。一瞬翼が見えた気がするわ｣
｢な、夏未さんまでその呼び名を…｣
｢我が雷門中では有名な話よ｣

　どうして種族的には人間であるはずなのに、天使として有名になっているのだろう。一体誰がこんな小っ恥ずかしい呼び方をし始めたのかもわからない。呼び名が独り歩きしすぎて、肩身が狭いものである。
　予想外の言葉に若干ダメージを受けたが、咳払いをして夏未に向き合う。

｢それで、用はふたつあるの。まずは、お礼｣
｢お礼……？私、何かしたかしら｣
｢選手としての入部手続きをしてくれたこと。本当にありがとう。実は、いざサッカーを始めるってなった時、冬海先生にどう言えばいいか分からなくて困ってたから助かっちゃった｣
｢そのお礼なら前も聞いたわ｣

　少し頬を染めてそっぽを向くのが何だか可愛らしい。微笑ましく見ていると、早口にもう一つの用件を尋ねられた。

｢昨日聞いた話なんだけど……｣

　雷雷軒での出来事を夏未に説明する。雷門中の金庫にイナズマイレブンの秘伝書があるらしいということを話すと、考え込んでしまった。

｢心当たりないかな？｣
｢いいえ。でも探してみる価値はありそうね。ここだけの話なんだけれど、何故か四十年前のサッカー部にだけ記録が一切残っていなくて、気になっていたのよ｣
｢そうなの!?｣

　ピンポイントで四十年前……つまりイナズマイレブンの記録だけがないとは、これまた不思議な話である。

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