【inzm】雷門の天使様２ (ページ21)

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　数日後。
　放課後を知らせるチャイムが鳴り響いた。ただでさえ元気がトレードマークと言えるほどなのに、いつもの十倍はテンションの高い円堂が、キャプテンらしく仲間たちの前に立つ。

｢みんな、わかってるな！｣
｢おー！｣
｢とうとうフットボールフロンティアが始まるんだ！｣
｢おー！！｣

　前言撤回。円堂だけでなく、部員皆のテンションも高い。それもそうだ、去年は人数も予算も足りず断念した、中学サッカーの夢の舞台・フットボールフロンティアに今年は出場できることになったのだから。

｢で、相手はどこなんだ？｣
｢相手は！｣
｢……｣
｢知らない！｣
｢あー……｣

｢っあははは！｣
｢笑い事じゃねえぞ天宮｣
｢天使様の爆笑とかレアすぎ……｣

　感動を噛み締める円堂に風丸が問いかけるものの、我らがキャプテンは基本大雑把なので細かいことは気にしないのだ。冷や汗をかく円堂と頭を抱える部員たちとのやり取りにAは思わず声を上げて笑い、染岡に半眼を向けられる(あとの小声はマックスのものだ)。そこに、珍しく顧問の冬海がやって来た。

｢野生中ですよ。野生中はたしか……｣
｢昨年の地区予選の決勝で、帝国と戦っています｣

　冬海の言葉を、情報が書いてあるらしい手帳を開きながら春奈が繋ぐ。

｢すっげー！そんな強いチームと戦えるのか！？｣
｢所詮大差で大敗なんてことは、勘弁して欲しいですね｣
｢……｣
｢ああそれから……｣
｢チーッス！俺、土門飛鳥。一応DF希望ね｣

　余計なことしか言わない冬海が、部室の扉の方を見遣る。すると、ひょっこりと背の高い男子生徒がフレンドリーに顔を出し、自己紹介をした。入部希望者のようだ。

｢君は物好きですね。こんな弱小クラブにわざわざ入部したいなんて｣

　嫌味ったらしく言い残して部室を出た冬海を指さし、土門が物言いたげな表情をする。胡散臭さと親しみやすさという対極にある雰囲気を同時に察知し、違和感を覚えたAが首を傾げた。

｢どうした？｣
｢んー……なんでもない｣

　不可解な様子に気づいた豪炎寺に小声で問いかけられるが、感覚的なものをなんとも言えないので首を横に振る。

　なんなのだろう、今の違和感は。
　Aにするように土門の手を振り回し歓迎する円堂を眺めながらも、一度芽生えた疑念は消えなかった。

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