【inzm】雷門の天使様２ (ページ28)

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｢……イナズマイレブンの秘伝書がある｣

　頭を悩ませていると、野菜を刻んでいた雷雷軒の店主が呟いた。

｢へぇ、秘伝書なんてあるんだ｣
｢なーに書いてあるんだろ……｣

　その言葉に案外普通の反応を示した風丸と円堂だが、すぐ我に返る。

｢えー！秘伝書だって！？｣

｢っふは……っごほ！｣

　清々しいほど完璧なノリツッコミ。おまけに息もぴったりだ。さすがは幼なじみといったところか。客が少ないとはいえ一応店の中なので、笑いをなんとか堪えようとして噎せた。口を開けている場合ではないので、背中を撫でて水を差し出してくれた豪炎寺に心の中で感謝する。

｢大丈夫か？｣
｢けほっ……な、なんとか……｣

　コップの水を飲み干し、息を整えて円堂たちの会話に耳を傾けた。

｢ノートじゃないの？凄技特訓ノートなら、俺ん家にあるよ｣
｢ノートは秘伝書の一部に過ぎん｣

　そこで、雷雷軒の店主は円堂の方を振り向く。

｢お前、円堂大介の孫か｣
｢うん！｣
｢そうか、大介さんの孫か！｣

　突然笑い出した店主は、円堂の正面にお玉を突きつけた。その拍子に、円堂は椅子から落ちて後ろ向きに転ぶ。Aは驚いて豪炎寺越しに倒れた円堂を見るが、頭は打っていないようだ。息をつく間もなく、店主はまた彼を追い詰めるようにお玉を突きつける。ひゅんと風の音が鳴るくらい勢いがあって、見ているとハラハラした。

｢いってえ……なにすんだ！｣
｢秘伝書はお前に災いを齎すかもしれんぞ｣
｢……｣
｢それでも見たいか？｣
｢ああ！｣

　二人の危なっかしい会話のような問答のような何かが終わりそうな気配がしたと同時に、思い出す。

｢あ、修也ごめん｣
｢ん？｣
｢さっき飲み干したの、修也の水だった｣
｢！？｣

　今度は豪炎寺が噎せた。慌てて水がなみなみ残っていた自分のコップを差し出す。
　何やってんだお前らという風丸の言葉には、揃って聞こえないふりを決め込んだ。何せAと豪炎寺は、正反対なようで割と似ているところもある幼なじみなのだ。

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