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A。A。
私のかわいい愛し子よ。
せっかくこの世界から逃れたのに、また戻ってくるとは。
｢ここ｣へ来ては、きみがまた──────。
きみはもう＊＊ではない、｢ここ｣とは関わらない場所で幸せになってほしいのに。
本当の敵は、──でも──でもなかったんだ。
きみのしあわせを、いつも──が邪魔をする。
しかし、私は──を排除することができない。
きみが愛した──を、きみを愛する私がどうやって攻撃するというのだ。
私はもう──も、きみのいない世界を彷徨っている。
◇
｢──、A！｣
｢う、ん……？｣
ぼんやりと視界が開けると、焦ったような心配そうな表情をした幼なじみと目が合った。
｢……わたし寝てた？｣
｢…………寝ていた｣
Aがただ寝ていただけにしては豪炎寺の表情が不自然だ。どうしたのだろう。
｢悪夢でも見たか｣
｢？｣
長い指がそっと濡れた目元を拭う。そこでAは自分が泣いていることに気づいた。
｢あれ、なんでだろ｣
｢どんな夢を見た｣
｢うーん……別に悪夢ではなかったと思うんだけど……｣
｢具体的には｣
｢声がしたの｣
｢声？｣
Aは夢で聴いたあの声を反芻する。初めて聞いたはずの穏やかな声は、何故か懐かしく物悲しかった。その声をどこかで聞いたはずだという確信だけが心の奥底にある。全く思い出せないけれど。
そんなことより、と先程から態度が不自然な豪炎寺を見た。
なんというか、
｢心配症に磨きがかかってるね｣
｢……お前が泣いたのは、初めて見た｣
｢それで焦った？｣
彼は質問に答えず、ふいと他所をむく。夢が原因で少し泣いただけなのに、こんなに心配してくれる幼なじみがいて自分は世界一の幸せ者だと思った。
｢それはそうと｣
｢うん？｣
｢今日もまた無茶をしたな｣
｢そ、そうかな〜｣
大体いつも危なっかしいんだお前は、とお説教が始まったので、怒らないでと抱き着いてみる。Aが手を握った時以上の硬直具合につい笑ってしまった。豪炎寺の鋭い視線から逃げるように彼の胸元に顔を埋める。これで無敵だ。
｢……A｣
｢はい｣
くぐもった声で返事をすると、盛大なため息をつかれた。
｢俺以外にするなよ｣
｢するわけないでしょー｣
君こそがオンリーワン幼なじみだ。
デジャヴを感じる会話の後そっと見上げると、気が抜けた様子の彼は思ったより優しく微笑んでいた。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年7月14日 17時
