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｢あの人……さっきフットボールフロンティアって言ったよな?｣
嵐が去った後、半田が呟く。皆で同時に円堂が部室に貼ったポスターを見た。
｢フットボールフロンティア……これに出られるのか｣
円堂を筆頭に段々と実感が湧いてきたらしく、笑顔ではしゃいでいる。けれど、忘れてはならないのは夏未が言っていた｢次の練習試合で勝利したら｣という序詞である。しかも負ければ廃部。
｢喜ぶのはまだ早い。俺たちは今度の試合に勝てない限り、出場できないんだぜ！｣
｢分かってるさ！ みんな、この一戦絶対負けられないぞ。練習やろうぜ！｣
窘める染岡に円堂が答えた。相変わらず前向きでサッカーバカだ。どこまでも彼はキャプテンらしい。
河川敷で練習するらしい彼らが試合に勝てる実力をつけるために出来ることをしよう、とひとり意気込むAに秋が話しかける。
｢A、タオル持っていくのお願いしていい？｣
｢もちろん！ ……よかったね、秋｣
｢え？｣
｢ずっと見守ってきたサッカー部に、目標ができたんだよ｣
｢ふふ、そうね。なんだか夢みたい｣
でも、と秋は悪戯っぽくAに笑いかけた。
｢Aが正式に入部してくれたのも、すごくうれしかったのよ｣
｢わたし？｣
｢うん。本当は、マネージャーひとりでみんなを支えられるのか、少しだけ心細くなることもあったから。Aがいてくれてよかった｣
｢……少しは役に立ててる？｣
｢少しどころか大助かりよ｣
荷物のない片手を引っ張られ、Aはよろめきつつ秋の隣に並ぶ。とりあえず部室を出たら、二人でドリンクを作って元気で前向きな部員たちを追いかけよう。何があってもマネージャーはひとりではないから。二人で力を合わせれば、彼らを支える縁の下の力持ちにだってなれるはずだ。
繋いだ手を揺らしながら、秋とAは頷き合った。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年7月14日 17時
