11. ページ12
.
昼休みになると、早速円堂が豪炎寺の席にやって来る。どうやらサッカー部に誘っているようだ。
せっかくだから豪炎寺と話そうと思っていたAだが、会話に入るのも気が引けたので秋の隣に立つ。豪炎寺は初対面の時と変わらず、円堂に対して顰め面で素っ気ない。
｢サッカーはもう、やめたんだ｣
｢やめたって、どうして！｣
｢俺に構うな｣
微妙な空気を裂くように、サッカー部の半田が教室に駆け込んだ。
｢円堂！ 冬海先生がお前を呼んでる。校長室に来いってさ｣
｢校長室？｣
｢大事な話があるらしい。……俺、嫌な予感がするんだ。例えば、廃部の話とかさ｣
｢廃部！？｣
｢私もそんな噂聞いたけど…｣
秋が不安げに会話に加わった。
Aはついにこの時が来てしまったか、と思った。学校の部活動は、はっきり言って金がかかる。備品でも大会でもその他でも。だから予算が設けられているのだ。
しかし、今のサッカー部は一チームも作れないほど人数が足りず公式戦に出られない。身も蓋もない言い方をすれば、雷門にとってなんの利益ももたらさない存在だ。無意味なものだと判断されても仕方がない。
｢冗談じゃないぞ、廃部になんかさせるもんか！｣
円堂が呼び出された校長室に行くために立ち去って行った。
｢……天宮は何か聞いてるか？ サッカー部のこと｣
｢噂以上のことは何も｣
｢そっか｣
半田と秋の表情には、不安の中にどこか諦観が入り交じっている。二人とも、心のどこかでもうサッカー部が手遅れだということを分かっているのだろう。
けれど……常識だけが、正解だけが、現実な訳ではない。Aは敢えて微笑み、半田の腕を小突いた。
｢まだ呼び出された理由が廃部の話って決まったわけじゃないでしょう｣
｢まあ、そうだけど｣
｢円堂なら廃部騒動になっても何とかするって確信もセットで、きっと大丈夫。何かあればサポートも惜しまないよ｣
｢お前って本当円堂に甘いよな｣
｢面白いからね、円堂は｣
まだ誰も分かってくれないけれど。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 137人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おひめ | 作成日時：2022年7月14日 17時
