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輝くばかりの10番を背負った後ろ姿を見るのは、いつ以来だろう。
｢修也、がんばれ｣
小さく小さく呟いたから本人に届くはずがないと思っていたのに、豪炎寺はAに背を向けたまま親指を立てる。不安と心配でいっぱいいっぱいだった心が、雲が切れたように晴れていくのを感じた。
ベンチに戻ると、秋と春奈に迎えられる。男物の制服を抱えて帰ってきたAに、秋はその双眸を瞬かせた。
｢A、その制服……｣
｢あ、これは修也のだよ〜｣
｢豪炎寺くんの？｣
随分親しげな呼び方なのが不思議だったが、少し前のAと円堂との会話の中に｢キック力がすごいAの幼なじみ｣という話題があったので、その彼かと納得する。
｢豪炎寺さん、天宮先輩の幼なじみなんですね！｣
｢うん、そうなの｣
｢円堂くんたちの姿を見て、来てくれたのかしら｣
｢たぶんね。すました顔しているけれど、修也は本当にサッカーが好きなんだよ。円堂といい勝負なくらい｣
春奈や秋とお喋りしている間、豪炎寺が入ったフィールドは多少ごたついたようだが、帝国学園が豪炎寺を選手と認めたことにより試合は再開した。
始めは雷門のボールだったが、あっさり帝国側に奪われ、鬼道が"デスゾーン"の合図を出す。技が放たれた途端、豪炎寺は円堂が守るゴールとは反対方向に全速力で駆け出した。
何故か帝国の鬼道を見つめる春奈の表情が少し曇ったのが気になったが、すぐにそれは掻き消される。
円堂がタイヤ特訓をしていた時に見た、あのオーラを放っていたのだ。
｢あいつ、俺を信じて走ってるんだ。俺が止めるって……これを止めた俺から、必ずパスが来ると信じて……！｣
円堂が掲げた手から金色の大きな手が現れ、"デスゾーン"をついに受け止めた。特訓ノートに書かれていた"ゴッドハンド"だ。円堂の努力と信念が、初めて身を結んだ瞬間だった。
円堂は前線を走る豪炎寺に向けて、思いっきりボールを投げる。胸でトラップした豪炎寺はすぐさまヒールで蹴り上げ、自分も跳んだ。
｢"ファイアトルネード"！｣
約一年ぶりの必殺技は、豪炎寺のサッカーへの想いのごとく燃え上がり、帝国ゴールへ突き刺さる。
20対1。円堂と豪炎寺のサッカーが、帝国に一矢報いたのだ。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年7月14日 17時
