【utit】甘く甘く溶けるまで (ページ10)

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ーーガチャリ。音を立てて開く扉の音に目を覚ます。

『A、出来たよ〜』

サイドテーブルに置かれた雑炊はホカホカと白い湯気を上げている。

『ん〜熱上がったんじゃない？しんどくない？食べる前に熱測ろっか』

ピピッー38.５ー
機械音がなった体温計をめいちゃんに渡すとあちゃ〜これはしんどいねぇと眉を下げる。

『よし、とりあえず雑炊食ったら薬飲もか！』

ベッドの縁に座った彼が少し放って置かれて丁度良い温度になった雑炊の乗ったお盆を手に取った。受け取ろうと手を伸ばしたがその手にお盆が渡されることはなく、代わりにめいちゃんの膝の上に置かれたお盆。
そしてめいちゃんはスプーンに一口分掬いフーッフーッと息を吹きかけると『あーん』と言いながら私の口元へ運ぶ。普段なら恥ずかしくて可愛げのない言葉を返すところだが、今日だけは甘えても許されるだろうと熱に任せて口を開いた。濃すぎず薄すぎない味付けのお雑炊は今まで食べた中で一番美味しいと言っても過言では無かった。

「ごちそうさま」

『ん。じゃあ薬飲もっか。錠剤だけど飲める？』

コクコクと頷くとコップと３錠の薬を手渡される。すっかり甘やかされてしまった脳は飲ませてくれないんだなんてふざけた事を考え始める。ボーッと薬を見つめる私を不思議に思ったのかA？飲める？と顔を覗き込まれる。先ほども聞かれた質問に今度はフルフルと首を横に振った。我ながら我儘だ。

『ん〜じゃあちょっと貸して？』

そういって私の手からコップと薬を取ると、彼がそれを口に含みそのまま私に口付けると流れ込む水。
コクリコクリと喉を通る水と薬。全てが彼の口から私へ移されると唇も離れた。
少し息の上がった声で飲めたね？というとポーッと彼を見つめる私をそっと寝かす。

『早く元気になってね』

子どもに問いかけるように優しく脳を溶かすように甘い声でそういうと瞼にそっと触れられた。

・

後日、すっかり元気なった私が次はめいちゃんの家に赴き彼の看病をすることになったのはいうまでもない話だろう＿＿＿。

fin.