【utit】甘く甘く溶けるまで (ページ3)

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『いらっしゃ、、、、、、は？』

いつものようにスマートに彼女を招き入れるつもりがその声は途中で途切れ、
代わりに続いたのはなんとも間抜けな声だった。

そこに立っていたのは紛れもなく、俺の彼女なのだがーー

ーー胸下まであったはずの髪の毛が顎のラインで切り揃えられていた。

『ちょ、は、えぇ？？？
　と、とにかく一旦中入ろか、、、？』

混乱する俺を置いて「お邪魔します」と冷静な彼女は家に入った。
脱いだ靴を揃えて俺の方へ向き直ると「志麻くん？」と声をかけた。正気に戻った俺は頭に浮かんだ言葉を整理することなくそのままぶつける。

『髪の毛！どしたん！？あんなに綺麗に伸ばしてたやん！！』

言葉を捲し立てる俺に対し

「似合わないよね」

と、苦笑いを浮かべるA。

『いや、そんなわけないし、めちゃくちゃ似合っとうし、可愛いし綺麗やけど、、、
　そうじゃなくて、なんで急に切ったん？あんな綺麗に伸ばしとったやん？』

と、尋ねるとまた俯いてしまった。

『とりあえず座ろか？紅茶でええか？』

Aが小さく頷きソファに座ったのを確認しキッチンで紅茶を用意する。

・

『で？髪切った理由に俺は関係してる？』

できる限り優しい声で尋ねながら、先ほど入れたホットティーをA専用にと買ったマグカップに入れ、彼女の前にコトン。と置いた。

俯いたままの彼女は俺の問いかけに答える様子は無い。

『Aが話したくなったら言うて？いつでもええから』

問い詰めるようなことはしたく無い。そう伝え、スマホの画面に目を落とした。
スマホを見つめてはいるが何をしているわけでもない。
彼女にはもう落ち着きましたよ、と言わんばかりの対応をしたが、頭の中は大好きなAが大好きなショートカットで現れた嬉しさと、今日会ってからまだ一度も笑顔を見ていない心配と、その理由がわからない困惑でいっぱいだった。

10分程二人の間に続いた沈黙を先に破ったのはAだった＿＿

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作者の一華牡丹です。
なんだか思ったより長くなっております(苦笑)もう少しお付き合いください。
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